シェアハウスの恋人 | 店舗探し.comの過去コラム

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2013/1/30

連続ドラマもすべて出揃いました。

視聴率では明暗を分けているものの、今クールは粒ぞろいとの評判
のようです。
私のイチオシは、大好きな坂元裕二さんが脚本を担当している、
『最高の離婚』(フジテレビ)です。
 
ドラマの舞台が現代であると、そこには時代を端的に象徴する風俗
や事象が登場してくるのは、特にトレンディドラマと言わなくても
当然のことです。

『最高の離婚』というタイトルからは、現代社会は、すでに離婚
自体がありふれた出来事であることがわかります。
 
『シェアハウスの恋人』(日本テレビ)は、タイトルにある通り、
シェアハウスで繰り広げられる3人の男女のラブコメディです。

ドラマの立ち上がりの視聴率は残念ながらやや苦戦気味のようです
が、ひとつの住居を複数人で共有する「シェアハウス」という居住
スタイルは、現在、大人気になっています。

特に、通常の賃貸マンション・アパートに+αで共用部施設があり、
その共用部をシェアをする形態である「ソーシャルアパートメント」
が、20~30代の若者を中心に人気が出てきているようです。
 
プライベートの一部を他人と共有するシェアハウスでの生活に、
若者が抵抗がないのは、フェイスブックやツイッターで、日常的に
プライベートを晒しているからなのかもしれません。

東日本大震災の強烈な経験が、地域コミュニティや、袖すり合う程
度の他人であっても、連帯したり思いやったりしなければという意
識を高めたということもあるでしょう。
 
しかし、考えてみれば、私たちはそもそも地球という住居をシェア
しているのでした。

複数の大陸を“部屋”とすれば、さしずめ海は“共用部施設”です。
大陸は、さらにいくつかの国にシェアされ、国はまた自治体にシェ
アされ・・・最少の単位が住居です。

シェアハウスはむしろ自然な生活形態といえるのかもしれません。
 
日本人は、ウサギ小屋並のマイホームにドアの鍵もしっかりかけて、
核家族ごとに閉じこもっているうちに、他者を、敵か味方かの二者
択一で仕分けする癖がついてしまいました。
べったり仲良くするのか、さもなければ一切の関わりをシャットア
ウトするか、といった付き合い方しかできなくなってしまったよう
です。
 
シェアハウスとはいかにも現代風なネーミングですが、かつて日本
には向こう三軒両隣では、醤油や味噌の貸し借りが日常風景でした。
映画『男はつらいよ』で典型的なシーンがあります。

夕食時にタコ社長が挨拶もせずにずかずかとやってきます。上がり
框に腰かけて、税金の支払いが大変だとかさかんに愚痴をこぼして
います。

「おい、そんなとこでぶつぶつ言ってないで上がって飯でも食って
 いけ よ。どうせ大したもんはないけど。」

おいちゃんあたりから声がかかります。

「そうかい。じゃあ、お言葉に甘えて・・・」

上がり框はいわば“共用部施設”だったわけです。
 
シェアハウスでの生活を通じて、他人との間合いの取り方に慣れた
若者がどんどん増えていくことは、とてもいいことだと思います。

少子高齢化で孤独な日本人が急増しても、彼らが孤独な人々を
“共用部施設”にうまく誘い込み、寂しい心を癒してくれるように
なるかもしれません。

さらには、頑なに孤立する国も屈託なく仲間に引き込み、ほどよい
関係を自然に築けるような、付き合い上手な人材が増えてくれるこ
とを期待したいものです。