『検診で寿命は延びない』 | 店舗探し.comの過去コラム

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2010/07/23

『検診で寿命は延びない』
    岡田正彦著 PHP新書
 
身も蓋もないタイトルの本書を要約すると、結局次の2行に
集約されます。
 
・病気を早期発見し早期治療しても寿命が延びることはない

・症状が出てから検査や治療を受けても寿命は同じ
 
予防医学の専門家で、新潟大学医学部教授の著者によれば、
健康診断を定期的に受けて得することがあったとしても、同じ

くらいの損を同時に被るというのです。

例えばレントゲン検査で浴びる放射線の被爆によって、健康
が害されるおそれがあると指摘しています。
 
門外漢の素人としては、検診を受けても寿命が延びるわけで
はないから、やるだけ無駄だと論拠を挙げて説明されれば、
合理的に反論するすべはありません。
 
検診に本当に意味がなければ受けなければいいのでしょうし、
もし、反証が出て検診の意義が証明されれば存続すればいい
でしょう。
 
しかし、本書の読後感に漂うのは、検診の是非という本書の
趣旨とは全く無関係で、いささか虚無的な感慨なのでした。
 
検診を受けるか受けないかはともかく、仮に寿命が延びたと
して、だからどうだというのでしょう?

そもそも、人生に生きるに値する意味はあるのでしょうか?

私たちがあくせく働き、意味ありげにうろうろしていることに、

何か本質的な価値はあるのかどうか?
 
やってもやらなくても、努力してもしなくても、実は何も変わり

はないのではないか?

自分がこの世に存在してもしなくても、たいして変わりがない

のだとしたら、自分が存在する意義は何なのか?
 
自分とは何か?
 
哲学書よりも強烈に、根源的な問いを胸元に突きつけ、青春
小説よりも鮮やかに、若き日の不安定で危うい苦悩を甦らせる。
なんとも奇妙で恐ろしい本なのです。