‘どろぼう'からどろぼう | 店舗探し.comの過去コラム

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2011/4/20

 

【おんなごころ】

 

泉  「電話って、かかる前に、ため息つきますね」


恒子 「ため息?」


泉  「ハア・・・って、受話器が肩で息するんです。
    夜なんか特にそう。 
    あたし・・あ、いま、いまかかるなって、判るの」


恒子 「電話、待ってらっしゃるのね」
                 (向田邦子『家族熱』)

 

再び、‘どろぼう'からどろぼうしてしまいました。

 

『名せりふどろぼう』
    竹内政明著  文春新書

 

前著『名文どろぼう』が評判となった著者が、今度はテレビドラマ
の名せりふを取り上げながら紡ぎあげたエッセイです。
今度も、期待を裏切らないできばえでした。
取り上げたせりふはもとより、地の文章で引用する文章やエピソード
が実にすばらしいのです。
いくつか失敬して紹介します。

 

「ノッペラボウの女が男をおどかそうとするのだが、相手は怖がって
 くれない。女はきまり悪くなって自分の顔を恥じるかのようなそぶ
  りを見せる。男が慰めて言う。

 

 「気にするこたアないよ。ンなもん、なくたっていいんだよ。サバ
   サバしていいじゃあねエか。ねえ?なまじ目鼻がついてんで苦労
   してる女ア、いくらもある」

 

「女優の吉永小百合さんがある対談で年齢の話題になり、『どんな
  ときに、もう若くないという感じを抱きましたか』との質問を受
  けた。
 吉永さんは答えたという。 

 

 〈涙が真っすぐに流れないで、横に走ったときです〉

 

 皺(しわ)の作用によるものか、顔の肉付きによるものか、横に
 走る原理は不明ながら、『そういえば・・・』とうなずいている
 女性は多かろう。」

 

ノッペラボウも吉永さんも、女性は皆、恋をします。


伊勢丹のポスターに使われた眞木準さんのコピーは

 

【恋が着せ、愛が脱がせる】

 

 恋をした女性は、いとしい男性に見せたくて、素敵な服をいろい
 ろ買うでしょう。
 その服を脱ぐ時はどういう状況かと言うと、たとえば男性の部屋
  で・・・ 

 

青い恋、ばら色の恋、紅蓮の恋。
甘酸っぱい恋、甘ったるい恋、苦い恋・・・。

 

恋を重ねていくうちに、誰もがミステリアスで魅惑的な大人の女へ
と変身していくのでしょう。そして、

 

司 「誰だって、修羅の一つや二つ、胸のうちに飼ってるよ。
    そいつをこう松明(たいまつ)みたいにあかあかと掲げて
    生きて行くんだ」
              (井沢満『夜に抱かれて』)

 

今日は最初から最後まで、『名せりふどろぼう』から文章を盗みま
くりでした。
女心もこんな調子で簡単に盗めたらいいのですが・・・。