春の朝 | 店舗探し.comの過去コラム

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2014/2/24

 

時は春
日は朝
朝は七時
片岡に露みちて
揚雲雀なのりいで
蝸牛枝に這ひ
神、そらに知ろしめす
すべて世は事も無し
     (上田敏訳「春の朝」)

 

貧しく純真な少女ピパは、毎日働いてやっと休みをもらい
ます。
ロバート・ブラウニングの「春の朝」は『ピパは過ぎゆく』
という劇詩の一節で、少女の幸せな気分が詩になっています。

 

ショートプログラムの失敗にもめげず、フリーの演技で自己
最高得点を叩きだした浅田真央選手は、万雷の拍手を受けて
リンクを後にしました。
彼女の顔には涙がありましたが、キラキラと宝石のように
輝いていました。

 

同じ日、浅田選手と同年代の、とある無名ブロガーが、失意
のうちに自身のブログを閉じました。

彼女のブログ仲間が、悪意の成りすましブログにさらされて
困っているのを見かねて、削除要求を相手に強く迫ったとこ
ろ、相手の周辺にたむろする輩から逆にからかわれたり、聞
くに堪えない言葉で罵倒を浴びせられ、いたたまれなくなっ
たのでした。


芯の強い彼女は、涙を誰にも見せたくなかったからなのか、
ふっと姿を消しました。

 

2度にわたる大雪による混乱も一段落してみると、春の気配は
もうそこまで来ています。

 

事が自分の身に起きない限りは、訪れる春は【すべて世は事も
無し】と感じられます。
しかし、いったん事が起こった当事者にとっては、揚雲雀も
蝸牛も目に入る余裕などはないでしょう。

 

「春の朝」は、あまりにも上田敏の訳が有名となってしまいま
したが、原文を忠実に訳すと、最後の2行はこうなります。

 

神は天に在り
この世はすべてよし

 

生命力あふれる若さは、そう遠くないうちに失意を癒やします。
浅田真央さんや無名のブロガーさんの涙は、すぐに乾くことで
しょう。
全力で、そしてまっすぐに若さを燃焼させている彼女たちが、

 

「この世はすべてよし!」

 

と、はち切れんばかりの笑顔を見せてくれる日が近いことを
祈ります。

 

“「神は天に在り、この世はすべてよし」
と、アンは小さくつぶやいた。”

 

朝ドラに登場することで、再び脚光を浴びることまちがいなし。
モンゴメリの『赤毛のアン』にも、最後にこの詩が引用されて
いるのです。