2013/1/18
オルゴールが好きです。
日本語にすると「自鳴琴」といいます。
これまで国内のオルゴール博物館にもいくつか足を運んだ
ことがあります。
博物館には、大掛かりなものでは、ゼンマイ仕掛けのフイ
ゴと笛を使うシンギング・バードとよぶ種類や自動演奏楽
器を実演してくれるところもあります。
迫力の大音量を上げる大掛かりなものも好きですが、どち
らかというと、宝石箱などの裏側についたぜんまいを巻く
ような安直なオルゴールの方に、より心が惹かれます。
ぜんまいをギリリとまくと、オルゴールは元気にシリンダ
ーを回転してメロディーを奏でます。
一周回ると、また同じメロディーを繰り返します。
そのうち、ぜんまいが巻き戻されてくるにつれてメロディ
ーは次第にゆっくりになり、最後には止まってしまいます。
どんなに明るい音楽でも、オルゴールで演奏されるとどこ
となく哀調を帯びて聞こえてしまうのは、アップテンポの
曲でも、最後はスローになりバラードのようになるからな
のでしょう。
同じ曲を周回しながら繰り返し、最後はひっそりとその歩
みを止めるオルゴールを、人生に例えることも可能です。
変化のない人生を淡々と繰り返し、やがては老いさらばえ、
ついには力尽き、息を引き取って終止符を打つ。
悲劇も喜劇も、穏やかな日常も波瀾万丈の人生も、どのみ
ち最後は皆、バラードで締めくくられるのかもしれないの
だという、メランコリーな情緒を掻き立てる作用が、オル
ゴールにはあるのかもしれません。
バタン!
宝石箱のふたを閉じてしまえば、オルゴールは途中でもピ
タッと鳴りやみます。
しかし、いきなり止めてしまうと、オルゴールの断末魔の
叫びが余韻となって響くようで、どうにも心がざわつきま
す。
どんなに哀調を帯び、心を滅入らせてしまうとしても、オ
ルゴールは最後の一音まで聞いた方がいいのです。
自分に運命づけられているぜんまいの長さだけ、最後の最
後まで人生をしっかり生ききった方がいいよ、と、オルゴ
ールは身をもって教えてくれているのかもしれません。