台北の朝、僕は恋をする | 店舗探し.comの過去コラム

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2011/4/22

やっぱり癒されました。

『台北の朝、僕は恋をする』
     監督: アーヴィン・チェン

癒し系の映画との予感があったので、疲れ気味の気分を回復する
べく、公開初日に観ようと思っていましたが、それが3月12日。
震災ショックでとてもじゃないけど映画どころではなく、その後も
ずっと行きそびれていました。
しかし、まもなく公開終了と知り、滑り込みで観てきました。

評判どおり、ストーリーはほっこりしていて癒されます。
主演のジャック・ヤオは純朴な好青年だし、相手役のアンバー・
クォはとても可愛くて魅力的でした。
他の登場人物も誰もがどことなくゆるく、行動が少しずつお間抜け
です。

登場人物は、逃げたり追いかけたりと、深夜の台北をあちこち走り
回ってどたばたと慌しいです。
しかし、哀愁を漂わせながらもどこかユーモラスなヴァイオリンの
調べが、すべての動きをスローモーにしてしまいます・・・。

‘ゴーマン美智子さん’という女子マラソン選手がいました。

女子マラソンの草分け的存在で、日本出身者としてただひとりボス
トンマラソンとニューヨークシティマラソン両方に優勝しています。

「周囲の景色が気になるようになったから。」

選手寿命の長かった彼女が、引退を決意した理由だそうです。
勝負に執着しているうちは、レース中に周囲の景色など楽しむ余裕
はありません。
ただひたすらにゴールを目指して一心不乱に集中して走り続ける
ばかりです。

しかしあるレースで、彼女はふと、肌を打つ風の香りに、季節の
移ろいを感じて胸が騒ぎ、路傍に揺れる名もなき花に心を奪われて、
ついペースダウンしている自分に気づいて愕然とします。
彼女は、もはや勝ち負けを競う選手ではないことを悟り、選手を
引退し、ランニングそのものを楽しむ市民ランナーとなろうと決意
したのです。

先進国の先頭集団を走り続けてきた日本は、思わぬトラブルで無理
やりに減速を強いられています。

再び猛スピードで走り出そうとの、焦りにも似た叫びも聞こえてき
ますが、この際少し立ち止まって、ゆっくりと周囲の景色を見回し
てみるのはどうでしょうか。
そこには、目を吊り上げて先頭争いをしていたら見えない、素晴ら
しい風景が発見できるかもしれません。

『台北の朝、僕は恋をする』のラストシーンで、主役の二人が踊る
ゆるいダンスには、まったりとした幸せ感があふれているのでした。
チャンスがあれば、是非ご覧ください。