岩波ホールのある街 | 店舗探し.comの過去コラム

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2013/2/19

岩波ホールの総支配人、高野悦子さんが亡くなりました。

岩波ホールは、高野さんが中心となって、世界の埋もれた映画を
発掘、上映するエキプ・ド・シネマ運動に取り組み、中東や中南
米、アジアなどの商業ベースに乗らない映画も積極的に上映して
きました。

映画好きであれば必ず利用したことのある映画館で、評判の高い
映画がかかると、よほど早く行ってチケットを購入しないと、希
望時間に映画が観られないことになります。

しかし、だからといって上映時間より早く行ったことはありませ
んでした。
なぜなら、岩波ホールのある神保町界隈は時間をつぶすのに困る
ことなどまったくないからです。

お昼時であるならば、まずはランチで腹ごしらえをします。
辛いカレーならば「エチオピア」、黒くてスパイシーなスマトラ
カレーの「共栄堂」・・・
神保町は日本一のカレー激戦地です。

「さぶちゃん」の【半ちゃんらーめん】、「揚子江菜館」の
【冷やし中華】・・・
神保町には元祖もいろいろあるんです。

天ぷら定食650円の「いもや」、老舗の餃子屋「スヰートポーヅ」、
洋食ならば、行列覚悟で「キッチン南海」、ちょっと豪勢にうま
いそばをたぐるなら「松翁」・・・。

満腹になったら書店めぐりです。

さすがに古本屋をじっくり眺める時間はありません。
まずは敬意を表して「三省堂書店」の巨大売場内をざっと歩き回
ります。あらゆるジャンルの本の売れ筋がよくわかるからです。

次に冷やかすのは「書泉ブックマート」。
アニメやアイドル系の本が充実していますが、そこは素通りして
4階のコミック売り場へ。
昭和世代にとって懐かしの漫画がお目当てです。懐に余裕がある
ときは一気に大人買いをしてしまいます。

まだ、30分以上時間があれば、喫茶店へ。

小難しい本を気取って読む時は、老舗「さぼうる」へ行きます。
薄暗い店内は読書にはあまり適していませんが、かつてここを訪
れた作家や文化人と同じ空気を吸った気になれるのです。
すずらん通り「TEA HOUSE TAKANO」にもよく行きました。
お気に入りの作家の本を、おいしい紅茶やスコーンと一緒に味わ
うのです。
至福のティータイムを過ごすうちに、上映時間をはるかに過ぎて
しまったことが何度かありました。

高野悦子さんのご冥福を祈りつつ、今度の休みには岩波ホールに
出かけようと思います。
上映中の映画は1987年に公開された『八月の鯨』とのこと。前半
の上映時間は連日混雑しているようです。

しかし、やはり、特に早く行くことはしません。
目当ての回に入場できなければ、久しぶりの神保町をじっくり
堪能することにします。