1億円の賭け | 店舗探し.comの過去コラム

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2014/3/19

冷静に結論を出してください。

問 コインを投げ、表が出たら2円を得て終了。裏が出たら
  もう一度投げることができます。
  そこで表が出たら4円もらって終了。再び裏なら、さらに
  もう一度投げることが許されます。ここで表が出たら、
  賞金は8円で終了。

  以下同様に、表が出るまでコインを投げ続けることが許
  され、賞金は1回投げるごとに倍になる仕組みです。
  この時、あなただったら、参加料がいくらならこの賭けに
  乗りますか?

『数学的決断の技術 
  ~やさしい確率で「たった一つ」の正解を導く方法』
    小島寛之著 朝日新書

市場のアナリストたちは、例えばこう言います。

「中東情勢がより悪くなるだろうから、有事のドル買いが起き
て、ドル高になるだろうから、ダウ平均は下落するだろう。」

いかにも論理的分析だと感心して聞いています。

ではこれはどうでしょう。

「風が吹けば桶屋が儲かるでしょう。」

荒唐無稽なバカ話と一笑に付すことでしょう。
しかし、数学的な意味においては両者は50歩100歩なのです。

「中東情勢がより悪くなる→有事のドル買いが起きる」が
8割程度の蓋然性を持ち、「ドル高→ダウ平均は下落」も8割
程度の蓋然性を持つなら、これらをつないで得られる「中東
情勢がより悪くなる」→「ダウ平均は下落」は8割よりずっと
低い蓋然性になると考えられるからです。

もちろん、「有事のドル買いが起きる」→「ドル高になる」
だって10割ということはありません。
もしこれも8割だとしたら、「ダウ平均は下落」が起きる確率
はほぼ5割になってしまいます。

一方、「三角形の3つの角度の和は180度である。」の定理は
例外なく成り立つ絶対的真理です。

「中東情勢がより悪くなる」→「ダウ平均は下落」や
「風が吹く」→「桶屋が儲かる」はいずれも蓋然的真理です
から、「→」を重ねるたびに論理は劣化していくことを自覚
していなければなりません。

えてしてアナリストの言うとおりに市場が展開しないのは、至
極当然なのです。

もちろん、アナリストばかりではありません。

私たちも、案外、自分だけは冷静に物事を分析できていると過
信してはいないでしょうか。

冒頭の問の解答です。

答 この問の期待値を計算してみます。期待値は確率×賞金に
  なります。

  1回目に表が出る期待値は1/2×2円=1円。
  2回目に表が出る確率は1/4×4円=1円です。
  以下同様に、1/8×8円=1円、1/16×16円=1円・・・。

  確率×賞金はどの回も1円になります。
  期待値は全ての合計金額ですから合計値は∞(無限大)に
  なります。
  賞金の期待値が無限大なのですから、参加料が、たとえ1000
  万円や1億円であったとしても、この賭けに乗るべきです。

実感はともかく、数学的にはこれが絶対的真理なのです。
冷静な数学的処理で、正解に辿り着けましたか?