いわゆるひとつの魚ヘンにブルー | 店舗探し.comの過去コラム

店舗探し.comの過去コラム

会員様向けメルマガに掲載された過去のコラムを掲載しています。

2013/5/17

少々時期を逸した話題ではありますが・・・。

アベノミクスとやらの魔法は、株高円安をいとも簡単に実現し、
大企業に好決算をもたらしています。

うっかりこちらも気前よく振る舞ってみたものの、実はその恩恵
にはいっこうに与っていないことに気づき、少々落ち込んでいた
ところでした。

長嶋茂雄氏と松井秀樹氏の国民栄誉賞同時受賞の話題では、国民
すべてが、疎外感なく喜びのおすそ分けをもらえたのです。

『野球へのラブレター』
  長嶋茂雄著 文春新書

『月刊ジャイアンツ』に連載されていた「野球の散歩道」をもとに、
加筆・修整・再構成されたもので、3年前に出版されました。
自らの現役時代のことから松井・イチローなどプロ野球選手に
ついて、大リーグ関係者との交流についてなど、長嶋氏の野球人生
にとって印象的だった出来事がとりとめなく語られた体裁となって
います。

しかし、本書に記載された内容はもちろん事実なのでしょうが、
なにか腑に落ちない気がしてしょうがないのです。

その理由はすべて、本書の語り口に原因があります。

いかに野球に関心が薄い人でも、話をする際の長嶋氏特有の言葉
遣いや独特の言い回しを何度か耳にしたことがあるでしょう。
本書の語り口は、明らかに長嶋氏のものではありません。

「なるほど、と思わないでもない。」
「もうひとつ余談を付け加えよう。」
「ここで一つわき道に入らせていただく。」
「だが、ここで考える。」
「話が外れた。オリンピックに戻します。」
「だが、ここから首をかしげてしまう。アンケート結果を引用し
 ながら話を進めていきますよ。」
「騒動には続きがある。」
「提灯を持ったつもりはない。正直な感想だ。その理由は?
 まあ、聞いてください。」

・・・言わんでしょう!

これは決して長嶋氏の語り口ではありません。
もちろん本書が、あくまで長嶋氏が語った内容をゴーストライター
がリライトしたものであることはわかります。
しかし、それならば、なぜ、話し言葉ではなく、客観描写にしなか
ったのでしょう。

「いわゆるひとつの魚ヘンにブルーだっけ?」
「How old おいくつ?」
「アイム失礼!」
「昨日も午前2時に寝て、午後5時には起きましたからね。5時間も
 寝れば十分です。」
「うーん、この試合は、一点でも多く取った方が勝ちでしょう。」
ファン「長嶋さんと誕生日同じなんですよ」、
長嶋氏「へー、で貴方の誕生日はいつなんですか?」

・・・やっぱりこうでなくちゃなりません。

本書の内容はほとんど頭には残っていませんが、へたくそな物真似
を見た後のようなおかしさはずっと尾を引いています。
長嶋ファンは必読でしょう。