貧弱なキャベツに・・・ | 店舗探し.comの過去コラム

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2010/4/15

どうりで、とんかつの脇のキャベツの量が貧弱で、キャベツのお替り
を頼んでもなかなか持ってきてもらえないわけでした。

キャベツ1個400円也!

日照不足など最近の天候不順で、野菜の価格が高騰しています。

どこからか儲け話を仕入れてきては、その悉くに食いつく人がいます。
古い知人に、そんなタイプの人がいました。

ある日、スプレータイプのインスタント珈琲が売れ残って大量にだぶ
ついているとの情報を聞き込んできて、外国に輸出すれば一儲けでき
るから一口乗らないかと、誘われたことがあります。

賞味期限切れ寸前の商品だとかで、何万本とかを捨て値で買って、
新興国のどこかに全部売り切ったと自慢していましたが、しばらくし
て、代金回収がうまくいかないとかで、あちこちに電話をしては怒鳴
りつけていました。

手で漕いで、足で舵を取る、知育用の三輪車を売るから手伝ってくれ
と頼まれて、日当と歩合欲しさに、幼稚園や保育園に、飛び込みで売
り込みに行ったこともありました。

1週間無料で貸し出して、気に入ったら買ってもらうという方法でした
が、8割がたは返却されてしまい、きっと赤字だったのでしょう。
高校生の時給並みの日当なのに、さも嫌そうに渡されたものでした。

またある時は、ゴルフ場の開発案件を大手企業に売り込みたいので、
持ち込む先を探して欲しいと、分厚い資料を押し付けられました。
100億円で仕切るから、10億円くらいマージンを乗せて売ればいいん
じゃない、と、それこそキャベツでも売るような軽い口ぶりで説明
されました。

キャベツではなく長ネギが冬に高騰したときには、中国から輸入して
一儲けするんだと大騒ぎしていました。

しかし、船が日本に到着してみたら、ネギはすべて海水をかぶってい
て、とても売り物にはならない、大損だ!と真っ青になって震えてい
た顔が忘れられません。

玄関のドアに付いている、外を確認するドアスコープですが、画期的
な新商品の独占販売権を獲得した、これで大儲けできる、と自慢げに
電話してきたこともありました。

なんでも、普通のドアスコープは眼をくっつけないと見えないから
不便だけれど、彼が販売権を握ったドアスコープなら、2,3メートル
離れたところからでも、外の人物が確認できるのだそうです。
大手ドアメーカーに売り込むんだと息巻いていました・・・。

この他にも、彼が手掛けたものは枚挙に暇がありませんが、結論から
言えば、本当に儲かったものは、何ひとつありませんでした。

儲け話の概要を、かいつまんで聞いている分には、確かにうまくいき
そうなのですが、いざ取り組んでみると、必ず想定外の問題が起きた
り、障害が現れるのです。

すると彼は、今まで熱中していたのが嘘のようにその案件を諦めてし
まい、また別の儲け話に突進していく・・・。

彼は、年がら年中忙しそうで、寝る間も惜しんで働いています。
休日も返上して飛び回っているのですから、安易にお金を稼ごうとす
るその根性はともかく、なまじの人よりよっぽど勤勉だと、半ばあき
れながらも感心していました。

しかし、どれも儲かるどころか損ばかりしているので、資金手当ても
忙しく、手形や小切手を振り回しては、綱渡りの資金繰りを続けてい
ました。

資金が逼迫すればするほど、胡散臭くてあやしげだけど、うまくいっ
たら借財を一掃できるような話ばかりを追うようになっていきました。
日に日に切迫度が増しているのが周囲にも伝わってきて、彼が眼を
血走らせて駆けずり回る姿を、はらはらしながら眺めていたものです。

しかしある日、ついに、にっちもさっちも行かなくなり、不渡りを出
すと、彼は姿をくらましました。
その後、10年以上も音信不通になっています・・・。

やっと貰ったキャベツのお替りのあまりの少なさに憤慨していたら、
この野菜高騰を商機と捉えて、走り回っているかもしれない古い知人
の姿が、ふと眼に浮かぶのでした。