2012/11/30
ドラマ『大奥～誕生［有功・家光篇］』（TBS系 金 22時～）はよしなが
ふみの漫画『大奥』が原作です。
将軍・家光の時代、疫病のために男子の人口が激減し、「将軍は女、仕える
のは美男3000人」の“男女逆転大奥”が誕生するまでのエピソードが主筋と
なっています。
将軍の世継ぎを巡る葛藤でシリーズ化されたフジテレビ版『大奥』のオマー
ジュのように対照的なスートーリー展開です。
『女性のいない世界 ～性比不均衡がもたらす恐怖のシナリオ』
マーラ・ヴィステンドール著 講談社
本書はフィクションではありません。
世界各地で実際に進行している男女比不均衡の実態についてのノンフィク
ションです。
自然出生性比は女子100人につき男子が平均105人となっています。
男性の方が若くして死ぬ可能性が高いために埋め合わせるための一種の均衡
作用です。
人間に限らず、たいていの種はバランスのとれた性比が健全とされています。
子育てに何年もかかる哺乳類の場合、メスの数が少ないと、オスは自分の
遺伝子を残す可能性をできるだけ高めるために、メスがすでに別のオスと
つくった子孫を殺して、うかつにも種の絶滅を速めるかもしれないからです。
しかし、現在世界中の多くの地域で性比バランスが崩れています。
アジアやコーカサス諸国でその傾向が強く、男子の出生率が110を超える地域
もあります。
この30年間で、私たちは赤ん坊の性別を確実にコントロールできるように
なりました。
出生前診断によって、自分が望まない性別の子どもを中絶してしまうことが
できます。さらに体外受精や人工授精を利用する最新の技術によって、親は
赤ちゃんの性別を胚の段階で（場合によっては受精前にコントロールでき
るのです。
男女比がアンバランスな場所では、数の少ない女性たちは売春婦や花嫁と
して売買され、余っている男性たちは暴力的傾向を強めます。
『大奥～誕生［有功・家光篇］』は、後継ぎである男子を得るために、なりふり
構わぬ将軍家を巡る荒唐無稽な物語ではありますが、作り事だと笑ってばかり
はいられません。
自分だけはとの積み重ねが生み出した不自然な性比によって、いつドラマが
現実のものとなるかもしれないのですから。