墜ちた翼 | 店舗探し.comの過去コラム

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2010/09/30

日本航空(JAL)の問題には、日本の弱点がすべて集約して
いたのかもしれません。

『墜ちた翼 ドキュメントJAL倒産』
       大鹿 靖明著 朝日新聞出版

本書では、沈まぬ太陽と言われ、日本を代表する象徴的企業
だった日本航空が倒産に至った内幕を、朝日新聞の元経済部
記者(現アエラ編集部)である著者が、緻密な取材を通して
明らかにしています。

日本航空が、実は張子の虎で、いかにでたらめだったのか。
親方日の丸をいいことにして、政治家は地元に、経済合理性
の無い空港を作り、必要性の無い土地を売りつける。
連結対象にならない子会社をどんどん作っては、官僚がそっと
天下る。
社内にコスト意識は無く、高給を食みながら尊大なエリ-ト
社員達は、出世競争に明け暮れる。

高度経済成長やバブルの恩恵で表面化しなかった、日本
航空の深刻な病状は、破綻という死を目前としてようやく自覚
されたのです。

本書で明らかにされる日本航空のでたらめぶりは、しかし同時
に日本という国のでたらめぶりと等しく、調子に乗ってドサクサ
紛れに滅茶苦茶をする社員の姿は、日本人の国民性そのもの
を表しているに過ぎないのかもしれません。

かつて、日本航空がわが世の春を謳歌していた当時の、
バブリーな実情を読んでいると、いい思いをしていた当事者
に、情けなさや怒りを覚えるより、むしろうらやましさを感じて
しまう自分に気がつくかもしれません。
だとすれば、読者に日本航空や日本のありようを批判する
資格は無いでしょう。

責任は、国民ひとりひとりにあり、声高に誰かを糾弾する
前に、鏡に映ったわが身の姿勢を正すことが先決なのかも
しれません。