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2011/8/18

俗世にまみれた日頃の垢を少しでも落とすきっかけになればと、
東京国立博物館で開催中の『空海と密教美術』展に行ってきました。
お盆にもかかわらず多くの人を集めていて、入口では入場制限が
布かれていました。

“空海が唐から請来したもの、自筆の書、指導して造った仏像など
 空海ゆかりの作品と、その思想的な息吹を色濃くとどめる時代の
 作品を中心に、真言密教の名品の数々”が展示されており、皆、
作品にへばりつくようにして見入っていました。

「密蔵深玄(みつぞうしんげん)にして翰墨(かんばく)に載せ
 難し 更(かわり)に図画を仮て悟らざるに開示す」

とのことで展示されている‘図画’を眺めたところで密教の片鱗す
ら理解できず、嵯峨天皇、橘逸勢と共に三筆と言われる能書空海の
真筆を見ても、いったいどこがうまいのやら判然としないままに、
ただただ熱心に鑑賞する観客の最後方から、邪魔にならないように
ゆっくりと歩きながらぼーっと鑑賞しておりました。

そんな自分でも、1時間ばかり空海の世界に身を委ねて会場を後に
する頃には、どこか厳かでしんとした心持になれるところが密教
美術の素晴らしさなのかもしれません。

「遠くして遠からざるは即ち我が心なり 
 絶えて絶えざるは是れ吾が性なり」
(仏心は遠くにあるようで実は近くにある。いかにも絶えている
 ようで絶えていないのは人の本性(仏性)である。)

空海の言葉に少し励まされる思いもします。

また、空海はこうも言っています。

「生まれ生まれ生まれ生まれて生のはじめに暗く
 死に死に死に死んで死の終わりに冥し」

何もわからないからこそ、せめて生まれてから死ぬまでの間にあ
る、今まさに目の前にある確かな【生】の現実に真摯に向き合っ
て、精一杯生きていくしかないのでしょう。