~ボクの綿毛、遠くまで飛んで行け!~音楽、マンガ時々AKB -3ページ目

新説 僕が描いた天使 3

「それでは出席を取ります。」
秋元が出席を取り始める。名前を呼ばれた者が返事をしていく。


「板野。」
「はい…」









「河西。」
「は~い。」




「神谷。」
「ウッス!元気っす!」




悠はぼんやりと自分の前の空席を眺めていた。


《座席表の名前…見た事ねぇ名前だったけど元何組の奴だ?》



「あぁそうだ。そこの席は転校生だ。高校生で転校は珍しいがな。今日は休みだ。いろいろ忙しいみたいでな。名前は…」
《名前的に女だったな…どんな奴だろ…》

悠は頭の中で一人考え初め、秋元の話は全く悠の耳に入って来ない。





「三上!」
「ん!?は、はいっ!」
秋元の三回目の点呼にようやく気づいた悠がようやく返事を返す。


「初日からぼぉーっとし過ぎだ!」
「すいませんした…」
悠が頭をかきながら謝る。

気配を感じ左に視線を移すと、健と智美が笑っている。そして一番遠くで友美が口を動かしている。


《ダサぁ~》
友美がバカにした顔で笑う。


「あの野郎…」
悠が握りこぶしを作りながら、奥歯を噛み締める。





朝のHRが終わり、全校集会。
校長の長い話を眠気と戦いながら聞き終え、教室に戻る。

新学期1日目は休み明けテスト。もちろんあの四人が勉強している訳が無い。
案の定、健はヤマを張って暗記している。
ともともは二人で焦って勉強している。


まぁ焦っているのは四人に限った事じゃない。
一人を除いては。


《今からやったって無駄な物は無駄なの。騒ぐな騒ぐな。》
悠は席に着いて、のんびりしている。
悠の目に一人の生徒が映った。




《はぁ~熱心に…今さらなんか勉強する事あんのかあいつ?》
ノートを広げているおとなしめの容姿の女子生徒。

彼女は柏木 由紀。
一年生の時は悠と健、そして慎也と同じクラスだった。
成績はいつもトップ。委員長もこなし内申も良い。美術部所属。



《勉強出来るのに更に勉強すんのかよ…イヤミか?いや、勉強してっから出来んのか。》
そんな事を考えている内にチャイムが鳴る。


テスト開始。



《あっ!ここさっき智と一緒にやったトコだ!》



《ここはさっきやったのでチユウ!》



《や、ヤマが外れた~…》


《ZZZZ…》







テスト終了。

放課後。


「ふわぁ~あ…」
「お前寝すぎ。テスト大丈夫なのかよ!」
「だって出来ねぇもんはしょうがねえだろ。」
帰り仕度を終えて、大きなあくびをした悠の元にやって来た健が流石に呆れて言った。
悠は開き直っている。



「まぁ俺も人の事言えねぇけどな…ってか俺今日部活休みだし、“例の場所”行くか?」
「まぁこの頃行って無かったしな…行くか。」
健は嬉しそうな顔で言うと、悠は少し考えてから立ち上がり言った。






商店街の一番端に目立たない喫茶店がある。

入り口には掛かっているかさえ気づかないような“OPEN”表札が掛けられている。


そして煤けた看板には〈ノンTea〉と書かれている。

「相変わらずきったないし、目立たねぇな。」
「まぁいいだろ。いつも貸し切り状態なんだし。」
二人は店の前に立ち、外観を眺めながら呟いた。


二人は店の入り口の取っ手に手をかけた。

新説 僕が描いた天使 2

二人が学校にたどり着くとクラス替えが張り出された昇降口に人だかりが出来ていた。


抱き合って喜ぶ者、慰め合う者、様々だ。


「ほら…だから早く来ようって言ったろ!」
「人だかりが収まってからでいいだろ。」
健が悠に言いよると、めんどくさそうに体を引きながら言った。


しかし健は聞いておらず、人だかりの中を“ごめんよ”と言いながら掻き分けて行く。

しばらくしてニヤニヤしながら帰って来た健の表情を見て悠は察した。


「なぁ悠…」
「三年間よろしく。」
話しかけた健の肩をため息混じりにポンと叩いて悠が先に歩きだす。


「なんで分かったんだよ~!ちょっと待てよ~!」
健が不思議そうな顔をして悠の後を追いかける。
悠と健は一年生で同じクラス。三年ではクラス替えが無いので高校三年間同じクラスという事になる。


まぁ中学一年の時以外ずっと一緒なのだが…



「でもな…同じクラスに」
下駄箱で上履きに履き替える悠に健がため息をついて語り掛ける。



「まさか…」
悠が上履きに履き替えるのを止め、健を見上げる。



「そのまさかだ…“ともとも”だよ…」
健が肩を落とす。
“ともとも”とは悠と健の幼なじみ、板野友美と河西智美の事で、友美の“友”、智美の“智”、からきている。



二人は重い足取りで階段を上がる。


一階から三年、二階が二年三階が一年という構造だ。

悠がいつもの癖で三階に上がろうとする。



「おっ?新入生?プッ…」
「う、うるせっ!」
健が明らかにバカにした顔で言うと、悠が顔を赤くして降りてくる。


二人はA組だ。廊下の一番奧だ。


「よっ。」
「おっ。慎也は何組?」
「俺はB。いいねぇAは“にぎやか”で。」
悠に話し掛けて来たのは緒方 慎也(オガタ シンヤ)。
一年生から試合に出場し、二年生にしてバスケ部のレギュラーだ。
悠とは中学からの仲だ。


慎也は微笑みながらB組の教室に入って行く。


「Bかぁ…にぎやかって…バカにしてんのか?」
悠がぶつぶつ呟きながら、教室の戸に手をかける。


戸を開けると目の前に、仁王立ちで女子が立っていた。


「うっ…板野…」
「何が“うっ”よ!せっかく智と一緒になれたと思ったら変なのまでくっついて来るし!どうしてくれんのよ!」
いきなり現れた友美に怯んだ悠に友美がまくし立てる。
悠もさすがにカチンと来たようだ。




「変なのとは何だ!こっちからすればお前らが変なのだよ!」
「はぁ~?バッカじゃないの?名前順的にあたし達の方が先だからあんたが着いてきたのよ!」
「名前順?訳分かんねぇ事言ってんじゃねぇよ?お前がバカだろうが!」
二人の言い合いは止まらない。一方が言い返すともう一方も更に言い返す。



「いやぁ…元気だなぁ…初日から…後二年間持つか?」
「厳しいね~…友もヒートアップし過ぎ…」
健と智美は二人で少し距離を置きながら悠と友美の言い合いを見ている。



やがてチャイムが鳴り、二人は睨み合いながら自分の席に着く。



自分の席を確かめる為に黒板に貼ってある座席表を悠は確認する。


「?」
座席表を確認した悠が何か疑問を感じたが、気にせず自分の席に着いた。




「なぁ、担任誰だと思う?」
「えぇと…あたしは体育の坂田(サカタ)先生がいいなぁ…」
健の問いに智美が頬杖をつきながらうっとりして答える。


「俺は英語の篠田先生だなぁ…へへへ…」
健がニヤニヤしながら宙を見上げる。



「えぇ~篠田はないよ~。絶対性格悪いよ!」
智美が自分の言葉に頷きながら言った。
健と智美は意外と席が近い。




『ガラガラ』
教室の入り口を開けて一人の教師が入って来る。



「はい。A組担任の数学担当秋元 康です。よろしくお願いします。」



《秋Tかよぉ…》
《秋T…》
《秋Tって…マジで?》
《秋Tとか…》

四人とも数学は赤点ギリギリ科目だった為、秋元とは“いい”想い出がある…泣けるくらいに…


四人は同時にため息と机に突っ伏した。

新説 僕が描いた天使 1

真っ白な花が一面に咲いている…



見渡す限り…地平線の向こうまで…


その花畑の中心に俺は居て…大の字になって灰色の空を見上げる…

雲と言うよりは、空事態が灰色だ…




ただ…ただ俺は空を見上げる…
音は消えた…もう何も聞こえない…



急に空から光が射す…
眩しくて思わず手で顔を覆った…

手を退けると…


灰色の空を切り裂いて一人の女の子が降りてくる…


綺麗な羽根をゆっくりはばたかせ俺の元に…


その娘は俺に手を差し出す…まるでこのつまらない日常から俺を連れ出してくれるみたいに…

















『ジリリリ!』
目覚まし時計の轟音で一人の少年がベッドから飛び起きる。


「またあの夢か…」
少年は目覚まし時計を黙らせて、頭のかきながら呟いた。


どうやら初めて見た夢じゃないようだ。


「この頃多いな…」
少年は呟いて、部屋から出て階段を降りる。

彼の名前は三上 悠(ミカミ ユウ)。
至って普通の高校二年生だ。



食卓にはもうトーストとオレンジジュースが置かれている。


「お兄ちゃんおはよ。」

「ん?もひゃよ。」

「ちょっと汚いから!食べながら話すのやめてよ!」
「わりぃ恵令奈。」

悠に話しかけたのは妹の恵令奈だ。
食べながら話す兄にご立腹の様子だ。しかし悠には反省の色は無く、笑って誤魔化す始末だ。




『ピンポーン』
日常的な二人の会話に間髪入れず入って来たインターホン。悠は時間的にも誰が来たか大体見当がついた。



「悠!急ぎなさい!今日から新学期でしょ!」
キッチンから母の怒鳴り声。しかし悠は空返事をして全く急ぐ様子は無い。


そう何を隠そう、悠は今日から二年生としての新学期。因みに恵令奈は中学三年、受験を控えている。



「いって来ま~す!」
一足先に恵令奈が家を出る。



「おはよ健ちゃん!」
「おっはよ恵令奈ちゃん!いやぁ今日も可愛いね~!」
外に出ると、坊主頭の少年が居て、恵令奈と挨拶を交わす。



「はいはいありがと。じゃあお先。あっ、お兄ちゃんまだかかるよ?」
恵令奈は軽く流して、道の先で待っている友達の元へ走って行った。


「待ったよ。」
「ごめんまゆゆ~。」







「いやぁ相変わらず俺に興味は無いのね。うん。でも恵令奈ちゃん…中3にしてあの体つき…いやぁ成長したなぁ…」
走って行った恵令奈の後ろ姿を見ながら少年はニヤニヤしながら頷く。



「朝っぱらから人の妹を変な目で見んなアホ健。」
頷く少年の後ろにいきなり現れた悠が耳元で言った。
少年はいきなりの事に驚き、可笑しな声をあげて飛び跳ねる。



「い、いきなり出てくんな!ゆ、幽霊かお前は!」
坊主頭の彼は神谷 健(カミヤ ケン)。
悠とは幼なじみの腐れ縁。生まれた病院から今現在までその縁は続く。



「ていうかおせぇんだよ!今日はクラス替え張り出されるから早く行くって言っただろ…って待てぇい!」
健が悠がいない事に気づき、既に歩き初めている悠を追いかける。


「そんなんで早く学校行くってガキかよ…」
呟きながら歩く悠に健が追いつく。
まだ健はギャーギャー言っている。






《あぁ~慣れちまったなぁ~すっかりこんな日々に…》
悠はため息をつく。


「悠!そいえばさ!こないだ…」
健が他愛ない話を始める。


「ウケね?」
「…プッ。マジかよそれ!」
無表情だった悠が吹き出して笑いだす。


《まぁ…悪かねぇか…バカとつるむこんな人生も!》
悠は空を見上げる。
夢で観たのとは違う、雲一つ無い真っ青な空を。