第2次世界大戦でドイツとソ連が繰り広げた絶滅戦争の実相を描いた「独ソ戦」(岩波新書)で知られる著者が、雑誌や出版社のWEBサイトなどに寄稿した時評や書評などを書籍化した。ウクライナ戦争や独ソ戦などのテーマごとに章立てされて読みやすくなっている。
ウクライナ戦争をめぐる論考では、兵力で圧倒的に勝っていたはずのロシアが目論んだ短期決着が失敗に終わり、膠着状態となっている要因や、ウクライナの「非ナチ化」というイデオロギーを掲げるプーチンが矛を収められない理由などをおさらいできる。
独ソ戦では新書に未収録のネタを披露。生物戦に携わった旧日本軍の731部隊がドイツ軍の生物戦力の向上に関与した可能性や、石原莞爾がドイツを対英米戦に専念させようと独ソ和平を工作し、参謀本部も巻き込んで特使派遣までこぎつけたとは知らなかった。
副題に「実証主義に依拠して」とある通り、著者もまた昨今のさばる歴史修正主義的な言説に対して深い憂慮を示す。某雑誌に誤りを指摘すると、編集者が「うちは学術専門書をやってるわけでない」と言い放ったというエピソードに暗澹たる思いがする。
書評を集めた最終章は本書で最も随筆的なテイストで肩ひじ張らず読める。 10代の頃に最も読み耽った北杜夫の「ドクトルマンボウ航海記」から、お得意のユーモアのみならず寂寥や旅情を読み取り、そこに惹かれたというのは意外だった。(角川新書)
【6日の備忘録】
休肝日3日目。朝=ご飯1膳、ジャコピーマン、リンゴ、昼=ご飯1膳、塩サバ、夜=肉豆腐。体重=58.8キロ。