(ややネタばれアリ)
読んだことがない作家を開拓しようと書店を物色中、帯に「このミス大賞作」とあるのを「このミス1位」と早とちりして手に取り、新人賞の応募作とは知らずに読み始めた。2度、3度のどんでん返しを盛り込んだストーリーを編み出す着想力や構成力はすごいかもしれないけれど、リアリティーの欠如をはじめとする違和感だらけの読後感だった。
大学事務室で派遣職員として働く若い女性が主人公。小学生の時に父親を少年による猟奇的犯行で殺害され、その影響で精神を病んだ母親は行方不明になり、親戚の家に預けられて肩身の狭い少女時代を過ごした主人公は、自らの境遇を運命としてあきらめの境地で受け入れ、歯並びの悪さもあってマスクを手放さずひっそりと暮らしていた。
さらに女性の妹も殺人事件の被害者となるのだけれど、この設定だけで極端過ぎてしらけてしまいそう。そのうえ保険外交員だった妹にも、事故死した恋人に受取人を自分とする保険に加入させたという保険金詐欺疑惑までかけられ、それも噓っぽくて脱力しそうになる。父親を殺した犯人の出所を噂で知るというのも少年事件の常識ではあり得ない。
女性の妹の潔白を晴らそうとするジャーナリスト志望の学生も登場するけれど、この人物造形も笑えないほど滑稽で、リアリティーの無さを挙げていけばキリがない。ストーリーに都合よく登場人物や状況を「作った」という印象が拭えず、要するにほとんど嘘っぽいのだ。オンライン書店で売り上げ上位に顔を出しているのが解せない。(宝島社文庫)
【25日の備忘録】
朝=ご飯1膳、ジャコ入り卵焼き、リンゴ、昼=ベーコンとキノコルのオイルソーススパゲティ、ミニトマトと茹でブロッコリー、夜=豚ロースとキャベツのレンジ蒸し。体重=59.2キロ。