読書メモ「グランドシャトー」(高殿円) | IN THE WIND

IN THE WIND

自分のための備忘録。音楽とスポーツ観戦、飲み食い、時々本と映画
Don't think twice, It's all right !

高度成長時代の大阪・京橋の老舗キャバレーが舞台。下っ端のホステスから物怖じしないしゃべりを武器に超売れっ子となり、タレントとして東京に進出して成功を収めた「ルー」が、人気絶頂期に大阪に舞い戻り、時代の流れで落ち目になった古巣の再生に挑むまでを描いた一代記。ルーの複雑な家族事情や恩人の先輩ホステスとの疑似的な家族愛も絡ませ、一気に読ませた。

 

本書に入り込めたのは、そもそも僕が大阪出身で物語がまとう空気感とか時代性を理解できる基盤があったからかもしれない。それでも、ルーの単純な成功物語だけでなく、「母親を3度なくす」というルーの身の上が人生の不条理や悲哀を感じさせ、深みを与えている。そしてルーの先輩ホステス・真珠の謎めいた存在が作品をより重層的にしている。

 

真珠は美人ではあるが、話術巧みなわけでもなく、控えめで決して出しゃばらない。それでも売り上げNo.1ホステスの真珠に可愛がられたルーは、寮代わりの長屋の一室で一緒に暮らす真珠の背中を追いながら成長していく。二人が家族を超えて静かに情を深めていくさまも愛おしい。大阪っぽさが苦手な人にはハードルは高いかもしれないが大阪出身以外の人にも是非読んで欲しい。

 

京橋にはかつて「グランシャトー」というキャバレーが実在し、今もサウナなどが入るレジャービルとして同じ名前で盛業中。テレビでは大阪人には馴染みのCMが今も流され、一字違いのタイトルはまさに絶妙な命名。たまたま本屋の店頭で見かけて「大阪ほんま本大賞」という聞き慣れない賞の受賞を宣伝する帯と相まって、つい手に取ってしまった。(文春文庫)

 

【15日の備忘録】

休刊日1日目。朝=ご飯1膳、ジャコ入り卵焼き、ナシ、昼=寿司ランチ、夜=豚バラとキャベツのレンジ蒸し。体重=60キロ。