映画メモ「夜空はいつでも最高密度の青色だ」 | IN THE WIND

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自分のための備忘録。音楽とスポーツ観戦、飲み食い、時々本と映画
Don't think twice, It's all right !

キネマ旬報誌と映画芸術誌で2017年のベスト1を獲得し、ヨコハマ映画祭で作品賞、脚本賞、主演男優賞など5冠に輝いたのをはじめ、各地の映画祭などでも監督や出演者が続々と受賞した話題作。最果タヒの同名詩集が原作で、主演の石橋静河のぶっきらぼうな朗読が随所に挿入されている。

 

看護師で夜はガールズバーで働く美香(石橋)と、日雇い労働者で左目が見えない慎二(池松壮亮)の恋愛物語。原作の詩集は未読だけれど、どういう発想でこんな人物造形ができたのかと思うほど、設定が現実感に乏しいのだけれど、nなぜか突き放して見ることができない独特の雰囲気を携えている。

 

故郷に無職の父と高校生の妹を残し、東京で一人暮らしの美香は、自分を殺し、一歩引いて覚めた目で周囲を見つめている。幼い頃に病死したと説明を受けている母親が、実は自殺だったのではないかと疑い、「捨てられた」感に今もなおとらわれ続ける。

 

一方、慎二の人物背景は高校時代に成績優秀だったのが示唆されるぐらいでほとんど説明なし。工事現場で働き、アパートの部屋は文庫本がぎっしり積まれて、隣室の老人からも本を借りるほどの読書家。日頃は物静かだけれど、何かのきっかけに堰を切ったように早口で喋り続ける癖もある。

 

そんな二人が居酒屋で、ガールズバーで、渋谷の路上で、美香の病院で、と立て続けに偶然に遭遇。都会に置き去りにされた二人は急速に距離を縮めていくけれど、キスはおろか抱擁するシーンすらない。二人がどこまで絆を深めたのかは観る者が推し量るしかない。

 

劇中で何度も登場する路上ミュージシャンが歌う曲が下手うまというか、奇妙な存在感を放ち、終幕近くで美香や慎二、そして観客をも驚かせる。慎二の部屋で夜を明かした二人が見つめる、小さなポットの花とともに、ポジティブなメッセージなのか。(監督:石井裕也、日本・2017年、111分)

 

休肝日1日目。朝・昼=ご飯1膳、ウインナとキャベツのソテー、リンゴ、夜=豚モヤシ炒め。体重=62.6キロ。