読書メモ「秘密解除 ロッキード事件」(奥山俊宏) | IN THE WIND

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ロッキード事件とは、故・田中角栄元首相が、アメリカの航空機メーカーから5億円の賄賂を受け取ったとして1976年7月に逮捕された事件。一、二審で有罪となり、最高裁に上告中、田中の死(93年)によって田中に対する裁判は終結したものの、最高裁が95年に贈賄側や田中の元秘書官側の上告を棄却。現職首相が5億円を受け取ったと認定した判決が確定した。

 

逮捕当時、僕は小学生で、国会に証人喚問された関係者が「記憶にございません」を連発し、賄賂を指す隠語だった「黒いピーナッツ」とともに流行語となったことを覚えている。本書は、調査報道で実績を残している新聞記者が、人々の記憶から消え、風化しつつあるロッキード事件の真相に、米国で機密指定を解除された膨大な公文書や政府高官のメモなどをもとに迫ろうとする。

 

副題は 田中角栄はなぜアメリカに嫌われたのか 。資源などをめぐる田中の独自外交がアメリカの「虎の尾を踏んだ」として、事件はアメリカによる謀略だったという風説を、本書は明確に否定。公開された公文書などからは、時として言を左右にし、腰が定まらない田中の言動や人格に対する米政府高官の嫌悪感はあったものの、米政府が組織として田中を陥れたという確たる証拠は確認できないという。

 

ロッキード事件が発覚したのは、米上院の多国籍企業小委員会の調査や公聴会だった。米政府の抵抗をはねのけ、小委員会はどんどん情報を公開した。ニクソン大統領が辞任に追い込まれたウォーターゲート事件を機に、アメリカの世論が情報公開支持へ一気に傾いたのが追い風になったという。ウォーターゲートがなければ、ロッキードも明るみに出なかったかも知れないというのだ。

 

さらに、アメリカの航空機メーカーがなぜ日本の政府高官に賄賂を贈ったのか。もともとは、日米貿易不均衡の是正のため、米政府に押し切られた日本政府が目に見える大きな金額になる米国製航空機の輸入を確約したのが始まり。そこへロッキード、グラマン、ダグラスの米航空機メーカーが3社が売り込みをかけた果てに起きた事件だった。残る2社も後年、疑獄事件を起こしている。

 

なにやらトランプ大統領に迫られて、アメリカ製武器の大量購入を約束した安倍政権の姿にも重なりはしないか。高度で特殊な兵器なので複数メーカーによる売り込み合戦になる可能性はあまり高くなく、ロッキードのような事件になるかどうかは別にしても、貿易不均衡をめぐる日米の非対称な力関係は何十年経っても変わっていないのだ。(岩波書店)

 

【24日の備忘録】

休肝日1日目、朝=ご飯1膳、ハタハタ一夜干し、リンゴ、昼=ベーコンとシメジのぺペロンチーノスパゲッティ、夜=カレー。体重=キロ。