その世界は、昼夜に関係なく霧が立ち込めており、
誰もが立ち入ることをためらうほどの妖気を放っていた。
その中に、あえて足を踏み入れるのは、余程の勇気を持った者か、
危険を察知する神経が鈍い者であるとしかいえない。
そんな世界のほぼ中央に、ひっそりたたずんでいるそのバーでは、
いつの日も新しい情報と展開を求める、情報に飢えた狐たちが、
神経を尖らせつつも、ほとんど言葉を発せず、聞き耳を立てているのであった。
この異常な世界をテンラインという特異な記述で表すために分析を始めた盲戌が
静かに言い放った言葉は、聞き手の常識を根底から覆すような驚くべき情報であり、
その一言で、この世界を理解するに十分な言葉であった。
そう、ことの発端は、とある酒場での他愛のない会話であった。
所謂サイエンスフィクションに傾倒する提督と
ネット上での遣り取りの可能性を探りたいという盲戌との
語らいの中で生まれたよくあるといえばよくある企画であったのかもしれない。
たった十行のラブレターの投げあいであると考えていただいて支障はないであろう。
ただしここにいたる、流動的に蠢くプロットの固体化は、想像以上に困難な作業であった。
わたしはここに宣言する。機械と呪術と神と酒こそが、この小説の礎となる元素だ。
サイエンスフィクションと神話世界そして、ハードボイルドの融合をこの小説のテーマとするのだ。
今様のライトノベルにならないことをモットーとして。
提督の紡ぎだした幻想的な世界の紹介により、物語の扉が開かれようとしている。

小説の骨子となるテーマが決まるまで、どのくらいの時間が必要か不明であった。
彼は、その時間までもがもどかしく感じるほど、大量の設定を準備していたが、
そのいずれもが結論まで至れないほど、散乱した設定の上で成り立ってしまう、
所詮、素人の書く小説は、結論までに行きつかない中途半端な駄作となる事を
示唆しているような始まりとなるのであった。
そんな中、提督のパートナーである盲戌は、あくまでもこの小説を完結させようと、
完璧なる骨子を持って、リーダシップを発揮し、ここに歴史的一ページを記すべく
大きな野望とともに、この物語を始める第一声を次の回で唱えるのであった。
それは、3年前に思いつきで始め、頓挫したにも関わらず、その才能にお互いが
近付こうとしつつも、たった十行でのリレー方式を維持する物語が始まるのであった。