映画「PLAN75」(2022日)
垣谷さんの「70歳死亡案法案、可決」でちょっと触れた「PLAN75」が配信スタート!早速見てみました。いや〜〜、こちらの方は、限りなくドキュメント風で、限りなくシリアス。なんか、もう「怖い」の一言です。ほぼBGMはなく、セリフも極端に少ない。映画をあまり見ない人だと、「よく話がわからないまま」どんどん進んでいく。それがまた怖い〜〜〜。垣谷さんが「70歳死亡法案〜」を書かれたのは、なんだかんだで10年くらい前だと思うのです、しかも要介護のおばあちゃん自身は68歳という設定でした。今、思うとまだ68歳って若いのにな。って感じがしますよね。人にもよるでしょうが。ところが、こちらの倍賞千恵子さんは、バリバリの78歳。本当にリアルです。背筋がシャンと伸び、目も耳も脚も達者で、ホテルの清掃員をしているという恐るべき体力があります。スマホもPCも普通に使いこなしておられました。身寄りがないので、一人前に働きながら、たまに同僚と女子回カラオケをしたりお泊りしたりして、地味だけれどしっかり生きてらっしゃる。まず、その姿に感動・・・・というか、尊敬、いや畏敬の念をいだきました。78歳であの体力、まずすごい、と。それだけ体も頭もしっかりしてるなら、78歳でもなんの問題もない。と思うけど、高齢だからという理由でホテル清掃をクビになり、必死で仕事を探すも見つからず。。。そのうち、住むところも困るようになり。。。友達が孤独死し。。。というまさに「背水の陣」から、とうとう「PLAN75」申込みを考えるようになる倍賞さん。。。元気なのに!健康なのに!持病もないのに! です。仕事さえあれば、まだまだ部屋を借りて自力で十分生きていけるのに。そんな人でも、ただ高齢だから、というだけの設定なのが非常にシビアな設定でした。で。PLAN75とは、なんぞや?というと、ぶっちゃけ、「満75歳になると、死なせてくれるサービスが受けられる」という制度。サービス、サービス、っていうんですよ。まるで、介護サービスを申し込むかのような調子で「サービスをご利用になる」という言い方をしていて、担当の役所職員などがいる。申し込んでからサービスを受ける日まで、フォローしてくれる。どうやって死なせてくれるのかというと、身寄りがいない場合、何人かまとめて「合同火葬」する関係で、1つのセンターに集まり、1人ずつ受付後にベッドに横たわり、薬物注入(全身麻酔をかける感じ)をするというやり方。「眠かったら寝ちゃっていいですよ」なんて、まるで健康診断受けてるような優しいこというんだけど、いや〜〜〜〜おそろし〜〜〜。それで一巻の終わりですから〜〜〜。そうやって、あっという間に「ご遺体」になってしまうお年寄り。工場じゃないんだから!てくらい、機械的に淡々と。このサービスの最も恐ろしいところは、垣谷さんの小説と違って「高齢者全員に死ねとはいってない、ご自身でよく考えられた上、ご希望になって申込みされた高齢者にだけご提供するサービス」というところ。今流行りの「自己責任」ってやつですよ。「死にたい」といってる高齢者に、こちらが安楽死させてあげるんだ、くらいの感じなんです。なんでもかんでも、本人が希望してる通りのことを叶えてあげるのは正しいこと。と信じているのは間違いです。だって、仮に働きざかりの27歳健康男子が「もう死にたいのでサービスを利用したい」といったところで、それは却下されるわけでしょう。それだけ見ても、誰かの自分勝手な論理なんですよ。ひとのせいにしないでほしいです。こういう映画とか小説とかって、大体「考えさせらた」という感想が圧倒的に多いものだけど、いやいやいやいやいや、こんなすごい描写を見せられなくても、わかるでしょ。わかってますよ普通の人は。特に我々中高年世代は。あ、だから、20代とか30代の人が見ればいいのかな。いやでも、こんなの見ても、わからない人はわからないだろうし、大体、こういうの見て、初めて「こういうのはいけないと思った」と気づくような人は、「こういうのでなければいいのでは」という考えになびくだけであって、根本的にわかってないような気がする。ぐ・・・・たり疲れる映画です。80年前に生まれた人も、去年生まれた人も、貧乏な家庭、裕福な家庭、どこの親に生まれるかも、本人には関係のないこと。両者で憎み合うこと自体がおかしい。どんな人であっても、公平に平等に健全に生きていく権利があるのはあたりまえのことなのに、それがわからないっていうのは、誤解を恐れずにいうと、真面目すぎるんだと思うんです。「だって、お年寄りが多すぎて、若者が支えきれない」っていうんなら、頭を使って、制度の方を変えればいいんです。なんで、人間がつくった制度を守ろうとして、「じゃあ高齢者に死んでもらうか」ってなるんだろう。死刑があんなに問題視されて議論される意味がまったくわかってないんだろうな。と思った。しかし、それにしても、倍賞千恵子さんが美しい。たぶん、あれ、すっぴんだと思うんだけど、顔立ち(骨格)があまりにも美しいために、どんなに肌がくすんでてシワがあっても、彫刻のように美しい。すごかったです。滑舌も声も、昔と全くかわらずきれいなので、全然みすぼらしい感じがないんです。あんな78歳はそうそういまい。いや、もう、こんなにぐったり疲れる映画、久々にみました。磯村くんの役などは、わずかな希望の光を見せてくれるものの、いや〜そんなものでは全然足りなかった。