12月に入った。


今回の希望退職者は会社の予定数以上の人が決まった。


私は課長と後任が決まるまではスタッフには辞めることを話さない

と約束をした。


希望退職の人は、自分の意思とは関係なく辞める方も多いので

手続きが終わると有休消化に入る人がほとんどで、事務所に来る

人が減ってしまった。


ある部署では課長以外は全員退職予定が決まり、業務に支障が

でていた。


私は自ら辞める選択をしたこと、スタッフのためにも、最後まで出勤

をすることを決めていた。


同時に、テンカツの準備も始めていた。


ただ、初めてのテンカツでもありどのように始めればいいかわからず、

まずは履歴書用に髪を切りにいき、写真を撮った。


そして、ネットで転職の仕方を調べた。


すると、転職エージェントの存在がわかった。


無料で登録ができること、エージェントが職を斡旋してくれることなどが

わかり、私の業界に強いと言われている大手のC社に登録をした。

そして、大手のR社とやはり業界に強そうなI社に登録をした。


やがて、各社から連絡が入り、面談日が決まっていった。



その7に続く

そして、





東京に帰ってきたのが、15時。

面接は16時からだった。


面接室に入ると、前回同様、上司(取締役)と人事課長が待っていた。


上司が口を開いた、

「前回から時間がたちましたが、結論はでましたか?」


私は一呼吸おいて、

「申し上げます。希望退職の選択をさせていただきたく思います。」


上司はうつむいたまま、無言の時間が過ぎた。


5分は続いた沈黙のなか、上司は重い口を開いた。

「理由はなんですか?」


私はしばし間をおき、やがて答えた。

「やりたいことがあるからです。」


また、5分沈黙が続いた。

そして、上司が深い溜息をついたあと、

「テンさんは会社の再建には手を貸していただけないのでしょうか?」


私は大きく頭を下げながら、

「申し訳ございません。」

そう伝えることしかできなかった。


また、5分の沈黙が続いたあと、上司は口を開いた。

「わかりました。」


こうして、面接は終わった。


部屋を出ると、面接の受付をしていた人事の人が心配そうに、

私を見上げていた。


私は

「長い間お世話になりました。ありがとうございました。」


すると、人事の人は泣き崩れてしまった。

今回のリストラで大勢の人たちが辞めていく姿をみてきて

ショックを隠せなかっようだった。


私は足早に事務所に向かった。


事務所では課長が戻ってきたところだった。

すぐに課長のデスクに向かい、面接の報告をした。


課長は一言、

「来年はテンにもっと活躍をしてほしかったんだよな・・・」


そして翌週、私は会社に希望退職の手続きをとり、

年内での退職が決まった。



その6に続く




「テンちゃん、また一緒に仕事しようよ!会って話をしようよ」


この言葉を聞いた時は返事につまってしまった。


「今、大阪でスタッフと飲んでいるので、あとでかけ直しますよ」


そう言うのが精一杯であった。


元上司とは、前回のリストラの後、前任者が全員辞めてしまい、

一緒に部署の建て直しを行い、共に切磋琢磨した仲間であった。


元上司も私も昨年の人事異動で、お互い違う部署に異動したので、

久しぶりに話をしたのだった。


今振り返ると、この時に声をかけてもらったことが、一番嬉しかったし、

そして、会社を辞めることを迷った瞬間でもあった。


結局、このあと元上司と顔を合わせると、決意が揺らぎそうだったので、

会うことはしなかった。


その場にいたスタッフは、この時の様子に異変を感じたようで、

「テンさん、もしかして辞めるんじゃないんですか??」と

ストレートに聞いてきて、返答に困ってしまった。


そして、ホテルに帰ってからも一睡もすることができず、一晩考えてしまった。


しかし、今ここで会社をでる決意をしなければ、後悔することになること、

自分の人生の転換期を逃してはいけないと思い直し、辞めることを

改めて決意をした。


そして、翌日。

お昼の新幹線で新大阪をあとにして、面接で自分の意志を伝えるため、

会社に向かったのであった。



その5に続く