相武万太郎オフィシャルブログ「六転び七転び八転びROCK。」(音楽、小説、酒) -5ページ目

相武万太郎オフィシャルブログ「六転び七転び八転びROCK。」(音楽、小説、酒)

ベッキーがテレビに出てるとチャンネルを変えてしまう男が、好きな音楽や小説を語ったり書いたりらじばんだりしています。音楽は洋楽ロックメインだったが最近はハロプロ大好きです。特にANGERME。










「それで、結局バンド名はどうするわけ」



大して興味もなさそうにヨシエがジュンペイに先を促した。主導権を握れない話題は嫌いなのだ。これはジュンペイも同じだったが、今は自分の独壇場、まだ優越感に浸りたかった。だが、その思惑はエツコに破られる。


「バンド名って、演奏するジャンルによっても違うものじゃないの?」


そう言われてみればそうだと言わんばかりにハマちゃんの鼻息が聞こえた。フンガ。


「ジャンルは僕が一番気にしているところだよ…なんたって僕はクラシックが専門なんだし」


ギターのシゲキは一見ボソボソした話し方だが、自分の意見に頑固そうなトーンだった。女神であるエツコにいい格好をしたいのか、メガネをしきりに直している。肝心のエツコはシゲキなど関心の外で、カッちゃんが何をいうのか待っている。結局は、音楽のことについてジュンペイが主導権を握れるわけがない。この場はカッちゃんが仕切るべきなのだ。


分かってはいるが、手柄を掠め取られた気分になった。いたちの最後っ屁として、チクリと促した。「そうだよ。どうすんだよ」あー俺って格好悪い。ジュンペイは自分に苛々した。



カッちゃんは、ジュンペイのように立ち上がらなかった。静かに話し始めた。



「結論から言えば、まずは有名曲をカバーするところからだろうな。ジャンルはポップス、ロックンロール、パンク。このあたりが無難だと思う」


「俺、LAメタルやりたいんだけど」


「ハードロックとかヘヴィメタルは難易度が高いんだ。それにメジャーじゃない。予選会を勝ち抜くには、メジャーな曲で易しいものをチョイスすべきだろ」


「歌いたいものを魂こめて歌う。これが観衆の心をつかむんじゃねーのか」


「ジュンちゃん、簡単にいうけど、ハードロックとかヘヴィメタルはハイトーンヴォイスなんだぜ!?実際、鼻歌で歌えていてもアンプ通して歌うのは難しい曲が殆どなんだよ」













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あまりにも似ている。声までも。夢をみているのかと疑うほどカッちゃんは兄と瓜二つだった。





夏の暑いある日のことだった。ヨシエは自傷行為がひどかったこともあり、より厳しい管理下で生活を強いられていた。白澤家は広大な敷地を誇ってはいるが、外に出られない自由は、敷地面積と比例しない。ヨシエは退屈をもて余していた。


ヨシエは、日課にしている犬の散歩から偶然にも外に出ることに成功した。敷地を歩いていたつもりだったが、気がつくとそこは外だったのだ。思わずそこに迷いこんでくれた飼い犬のジョンに抱きついた。「やったわ、ジョン」


しばらく自由を謳歌していたヨシエだったが、いずれは戻らなければならない身なのだ。後悔しないよう行きたいところに行こうと思って向かった先で偶然同じように脱走中のカッちゃんに出くわしたのだった。


草むらでお互い、似つかわしくない格好をしていた。まるでお嬢様と物乞いが、平行線を見渡すことのできる草原で目と目があう瞬間だった。ヨシエは、兄があの世から自分を探しにきたのかと思い、動けなくなった。一方のカッちゃんも、顔面がみみず腫した少女との邂逅に戸惑っていた。


「あなたは…」


「俺?カツアキっていうんだ。キミは?」


「アタクシは、ヨシエっていうの」


カッちゃんは、生まれてはじめて女性を泣かせてしまったこの日をよく覚えていると後日話してくれた。すぐに執事に捕らえられ、出逢った時間はわずか数分間に過ぎないのに。










驚いたのはヨシエだけでなかったのが幸いした。ヨシエは執事に密かにカッちゃんの居場所を調べさせた。そして今に至る。ヨシエはカッちゃんが実の姉弟であることを知っている。だが、カッちゃんは知らない。もちろん、エツコやジュンペイも知らない。










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ヨシエにとって、今日という日ほど待ち焦がれた日はない。ずっとずっと、憧れていたカッちゃんと、バンドを組めるなんて。








カッちゃんの音楽に対する才能を知ってからというものの、この日のために何年もピアノを練習してきた。ピアノは今は亡き兄の忘れ形見だった。


兄は幼少の頃からその才能を発揮していた。ピアノだけにとどまるような人ではなく、ヴァイオリンなどの弦楽器からチェロのような吹奏楽器までこなした。本人は指揮者を目指し、日夜研鑽に励んでいた。二人とも外出を許されない厳しい監視にあるなか、音楽だけが友だちだったのだ。


だが、白澤家が長男に求めるのは音楽家としてのキャリアではなく、実業家としての才能に他ならなかった。白澤グループをまとめ、何万もの従業員の生活を背負わねばならない。それが白澤財閥の長男として生まれた宿命だった。


兄はその重い十字架を背負いながらも、双子の妹であるヨシエには優しく接していた。妹に負荷のないよう常に気を配り、邪悪な宿命を一手に引き受けていたのだ。


だが、そんな生活は長く続かなかった。厳格な父から人生の軌道修正を求められつづけ、気性の優しい兄は発狂した。そして自らの命を絶ってしまった。



ヨシエにとって唯一心を開けるのは兄だけであっただけに、兄の死はヨシエの心に深い闇を落とした。食事はとらず、自身の顔や手首など自傷行為することも度々だった。彼女は元来愛らしい顔立ちだったのを、自らの手によって汚し、醜さを身につけたのだった。それは兄を殺した父への復讐に他ならなかった。


そんな自虐的な毎日も、やがてカッちゃんとの出逢いによってかわる。カッちゃんは兄と生き写しの容姿をもっていたのだった。










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ジュンペイは、一通り説明をすると、ふとヨシエがしれっと座っていることに気がついた。何しろ、喫茶エスポアールに到着するやいなや、天敵とひと悶着あったのだ。スーブスのことなど目に入るはずもない。


それにしても、不気味なやつだと思う。ジュンペイが勉強しなければならないことを聞きつけると、すぐに家庭教師を紹介してくれたのはヨシエだった。カッちゃんは、寂しいじいさんだから話を聞いてやれと言っていたが、金がかかった法螺話だということはさすがのジュンペイにも察しがついた。あんなに教え方がうまい隠居爺がいるはずがなかった。空気を読んで文句を言わなかっただけである。


エツコとカッちゃんの思いに涙が出そうになったが、ぐっと堪えて勉強したまでだ。三人は決して離れ離れになってはいけない。自分の我が儘でそれを曲げてはいけない。だから、死ぬ気で勉強したし、そのお陰で無事奨学金の目処がついたのだ。それはエツコとカッちゃんのたっての願いをヨシエが快諾してくれたからだろう。


だが、ヨシエがこの場所にいる理由はなんだろう?カッちゃんは、ヨシエがバンドの話をもちかけてきたと言っていた。カッちゃんとバンドを組みたいのだろうか。カッちゃんと付き合いたいから、こんなまどろっこしいアプローチをしているのだろうか?エツコなら何か知っているかもしれない。あとで聞いてみようと思った。


ジュンペイのそんな思いは次のカッちゃんのひとことでより強くなった。


「あー。いい忘れてたけど、ヨシエはキーボードのメンバーだから」



ヨシエは、驚きで目を白黒させているメンバーをぐるりと眺めると、ざわめきが鎮まるのを待った。そしてゆっくりと、自己紹介をした。あの独特のバリトンボイスで。




「というわけでアタクシ、克明クンにどうしてもと言われたから、キーボードとして参加させていただくワ」











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「ジュンペイが英語なんて意外だわ」

エツコが感嘆したように声をあげると、ジュンペイはわざとらしく顔をしかめてみせた。誇らしげにみえたのは気のせいではない。


「俺だって、ここんところずっと勉強してたんだ。語学力くらいお前らにすぐ追い付くさ」


そのときカッちゃんが一瞬、ちくりと胸を刺されたような顔をしていたのをヨシエ以外の全員が見逃した。テーブルの下でヨシエの爪先がカッちゃんの足を蹴った。


「いでっ!!」


「どうした?」


「アタクシの長い足が克明クンに当たってしまっただけですわ。つづけて?」

それにしてはリアクションがでかいと思ったが、自分に関係ないことだとすぐに忘れるのがジュンペイだった。気を取り直し、自分が考えたバンド名案の解説をはじめた。



「『No. Problem』ってのはさ、ケセラセラ精神を表してるんだ。ノープロブレムそのままだとヒネリがないから、表記上は『No.』にしてみた。

『Any Questions?』は、カテキョーの先生の口癖なんだけど、意訳すると『文句あっかよ!!』って感じでパンク精神そのもののような気がしてね」


なんだかジュンペイが別人のようにキラキラしている。考えてみれば、陸上からドロップアウトして以来、ジュンペイはずっと腐っていたのだ。今、やっとやりたいことを手に入れて、ウキウキしているのだろう。エツコは胸にこみあげてくる思いを抑えるのに苦労した。



『Rose(Eros)』は俺イチオシなのよ。『Eros』のアルファベットを組み替えて『Rose』と書くんだけど、エロスって読ませるわけ」


一同から感心の声があがり、ジュンペイも満更ではないようだ。


「『B.B(Best Before)』は賞味期限って意味だけど。俺たちの賞味期限っていつまでなのかな?それを音楽で追求してみたいんだ。そして最後の『SEXES』は見た目オンリーだな。一応、回文みたくなってるんだよ」



ここまで一気に話したジュンペイは、テーブルに置かれた水を一気に飲み干した。






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自分の捲いた種は、自分で刈り取らねばならない。恵理子は何かを狙っている。俺にそれを防げることができるか。「ハム取り紙の江藤」の名に懸けて、阻止してみせる。江藤は今朝の新聞紙を読みながら改めて決意した。そして、デスクの電話をとった。「やあ、久しぶりだね、ザミール」


「ざっと1週間ぶり、ってところかな。元気かい、コウ」


受話器の向こうから、流暢なキングス・イングリッシュが聞こえてきた。ザミールは、イスラエル諜報特務庁、通称「モサド」の最も優秀なエージェントのひとりだ。江藤はCIA留学中に同じく留学中だったザミールと知り合った。ザミールは見た目も中身もイスラエル人で、江藤も同じく典型的なアジア人だった。ヒスパニック系が多いこの地域でマイノリティだった二人が親しくなるのに時間はさほどかからなかった。江藤が日本に戻った後もザミールはモサドのワシントン支局の責任者として活躍しており、彼からの情報は非常に有益だった。CIAとモサドはある種提携関係にあり、日本の片田舎で起こった出来事まで把握しているほどである。


「元気でもない。実は復帰することになった」


「そりゃあ日本にとってはめでたいことじゃないか。コウの能力は、ワイフを探すために使われては国益が損なわれるからね」


「相変わらず、言ってくれるね。復帰することとなった理由はわかるね?」


「例の細菌兵器騒動だね?」


「そうだ。実はザミール、この細菌兵器については少し心当たりがある」


「ほう。恐ろしいことをさらりというね。君のことだから大丈夫だろうが、安全な回線なんだろうね?」


「盗聴されることはない。この細菌兵器については、数年前に噂があったことをふと思い出した」


「数年前・・・。まさか福音の会?」


「そのまさかだ。確か当時、君にもレポートしたと思う」


「完成させてしまったということか?成分だとか、殺傷能力だとか、そういった情報は」


「まだない。だから君に電話したのさ」


「確かに、いま貴国が中韓に接触するのは得策ではないな」


「その理由はちょっと違うな。君のほうが優秀だからさ」


江藤がそういうと、二人とも笑った。


「オーケイ、我がモサドも興味ある事案だからね。心当たりに聞いてみよう」


ザミールはそういうと、フックをおろした。お互い、無駄な時間を嫌う性格だった。それにしても、と江藤は思う。自分の予想が当たりこの事件の黒幕が福音の会だとすると、妻はどこまで関与しているのか、考えるだけで恐ろしかった。細菌兵器が日本の国際問題に発展する前に、必ず阻止しなければならない。緊張で手が震えているのに気づいた。3年前にやめた煙草を、これほどほしいと思ったのは久しぶりだった。







(つづく)
※応援コメント、どうぞよろしくお願い申し上げます。
※以下より、登場人物メモです。ネタバレのおそれがあるため、
 以下閲覧注意です。





・的場英二:
S県警刑事局捜査1課所属。32歳。やせ形、筋肉質。伸長189センチ、体重78キロ。切れ目で高身長で一見もてそうな容姿をもつも、近寄りがたい空気を醸し出しており、友人も少ない。独身。ストイックで、禁酒・禁煙をしている。毎日8キロのジョギングが習慣。恋人は何年もいなかったが、事件を通じて恋に落ちる?

・江藤光太郎:
警視庁公安部所属。55歳。中肉中背。172センチ、体重75キロ。薄毛。妻恵理子は行方不明となり、失踪宣告した。娘の恵だけが生きがいだが、親子仲は悪い。粘着質のように仕事を進めることからハエ取り紙、公安部の略称「ハム」とあわせて「ハム取り紙の江藤」の異名をもつ。妻失踪後、仕事の情熱を失っていたが、今回の「福音の会」事件で妻が信者であったことを知り、情熱を燃やす。しかし、事件に配偶者が関わっている可能性があることから担当からはずされる(忌避)。それでも、独自に捜査を進めていたところ、的場と出会う。

・江藤恵
光太郎の娘。25歳。伸長162センチ、体重51キロ。父とは微妙な関係だが、父を嫌いなわけではない。目鼻立ちがくっきりしたかわいらしいタイプ。夜遊び・外泊を繰り返していたが、的場と知り合ってからは、真面目になる。母が失踪したことで、愛情に飢えている。自分のせいで失踪したのかと思いこんでいる。

・毒島寛
警視庁公安部所属。197センチ、体重87キロ。巨大な体躯。江藤とコンビを組んでいたが、江藤が担当を外されたことで、別の人間(中本重徳)と組む。しかし、江藤に同情する彼は、江藤から度々頼まれごとも、快く引き受けている。温厚で気さくな性格。

・杉本冴
S県警刑事局捜査1課所属。30歳、バツイチ。172センチ、54キロ。的場の仕事上の相棒。つっけんどんな対応しかしないのは、古傷が癒えていないからである。的場のことを気になりつつも、必死に一線をひく。女性と子供には優しい。



・綿貫博一
的場の同級生。眼鏡をかけており、ポッチャリ型。168センチ72キロ。おっとりした性格と信念を貫く強い面を併せ持つ。福音の会にハニートラップを仕掛けられた末、研究者としてからめとられることに。ゴモラソドムの開発者。研究者としてのエゴが人間としての良識を上回り、ゴモラソドムを開発してしまうも、良心に苦しみゴモラソドム消滅を図ろうとして組織に殺される。

みんなおはよー。ローラだよ☆ウフフ☆

んとね、作者がくたばってるからローラに書いてって言うからウフッ☆
朝から書いてまーすキャハッ☆


オッケー、じゃあね、今後の展開をちょっとだけ教えちゃうねウフッ☆てゆーかアタシは作者じゃないからただの見所予想なんだけどペロッ☆






◆エツコ、ジュンペイ、カッちゃんとの三角関係


◆ジュンペイとシュウイチとの争い


◆ヨシエとカッちゃんとの関係が明らかに


◆対バンが次々と登場


◆地獄のバンド合宿で大喧嘩?


◆気になる音楽性は?


◆それぞれのパートにおけるテクニック論


◆新キャラも続々登場






ざっとこんなとこかなウフフ☆




じゃあね、これからも新感覚青春音楽小説【勝手にジュンペイ!!】をよろしくねバイバーイ☆








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「悪かったな、変な空気になっちまって」


「本当、困るんだよね……僕を面倒事に巻き込まないでよ?」

ジュンペイがしおらしく謝ってみせると、シゲキがおどおどしながらもはっきりクレームをつけた。こいついい度胸してやがると思いつつ、まずはバンドの話を進めなきゃなとこらえた。


「ああ大丈夫だ。目下、一番大切なのはバンドだからな」


そういうと、テーブルに一枚の紙を置いた。全員がのぞきこんだ。そこには議題が書いてある。もちろん、ジュンペイの字ではない。


「マネージャーのエツコに今日の打ち合わせの議題を書いてもらった。まずは、バンド名を決めようぜ」


そこに書かれた議題の順番では『バンド名決定』は最後のはずだったが、やりたいことから始めるジュンペイらしい進め方にエツコは苦笑した。


「なんか候補あるの?」


エツコが聞くと、ジュンペイは財布からくしゃくしゃに畳まれた紙を自分の目の前で広げた。


「いくつか考えてみたよ」



そこに書かれていたバンド名は、以下の通りである。エツコはそれらがすべて英語だったので思わず声をあげた。





No. Problem
Any Questions?
Rose(Eros)
B.B(Best Before)
SEXES







※ここで皆さんにバンド名を緊急募集します!!よいバンド名があればコメント欄にお願いします♪(*´∇`*)



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何はともあれ、バンドを組む準備は整った。そこでジュンペイは、メンバー全員を学校近くの喫茶店に呼び出した。


「エスポアール」は、付近にある唯一の喫茶店で、昔から薄木高校の学生のたまり場だった。オカマのマスターが経営者なのだが、マスターはその昔『ルート16』というこの辺りでは知らない者はいない暴走族の特攻隊長だったらしく、周りから畏れられてもいた。


「こんちはマスター!!」

「あらジュンペイ、いらっしゃい。みんなお待ちかねよ」

「人を呼び出しておいて遅いじゃない」

マスターの肩ごしに、エツコの声がとんだ。

「なんでお前がいるんだよ!!」
角のテーブルには自分以外のメンバーだけでなく、ヨシエとシュウイチまでが座っていた。ヨシエがいるのも分からないが、さらに理解できないのは江藤秀一の存在だ。


シュウイチは施設で一時期一緒に暮らしたかつての仲間で、素行が悪く地元では有名な不良だった。中学を卒業せず悪の道へとドロップアウトしたのではと専らの噂だった。ジュンペイとは犬猿の仲であり、それはエツコを巡っての争いが発端である。


シュウイチはなにかとエツコにちょっかいを出そうとする。そのたびエツコは気味悪がってジュンペイに頼ってきた。この日もシュウイチは完全アウェー、周りも困りきっているのがエツコの目をみても明らかだった。


ジュンペイは、シュウイチを見下ろすと、わざと舌打ちしてみせた。
「相変わらず、ロン毛が似合わねーな」

「久しぶりだってのにご挨拶だな?」

「お前のツラなんぞ見たくねーんだよ」

「まぁ、今日はただの顔見せだ。俺が薄木に戻ってきたってことをお前とエッちゃんに伝えときたくてな。特にエッちゃん。やっぱり可愛いね♪」

シュウイチのトカゲのような目がくりくりと動く。本人は笑っているつもりらしいが、エツコはこれを見ると寒気がすると言っていた。

「自宅に鏡ねーんだな」

「あん?」

「なんでもねー。お前が帰ってきたのはよく分かったから今日のところは帰ってくれよ」


声を抑えたジュンペイの様子をシュウイチは面白がった。シュウイチが立ち上がった瞬間、曲げ木のダイニングチェアーが軋んだ。


「お上品な高校に行ったらタマ無しになっちまったか?いいか、お前は俺と同じドブネズミなんだぜ。地下水でも飲んでるのがお似合いだってことを忘れんじゃねーぞ」


マスターが睨みをきかしているなかではさすがの二人もそれ以上大事(おおごと)にはしなかった。シュウイチはくるりと背を向け、手をひらひらさせながら店を出ていった。ジュンペイが歯ぎしりしていると、エツコが叫んだ。


「あいつっ!!コーヒー代払ってないわ!!」









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地獄の合宿を経て、ジュンペイとハマちゃんには友情が芽生えたようだ。無口なハマちゃんと仲良くなるには確かにこんな方法しかなかったのかもしれないと考えると、カッちゃんは、あらためてヨシエのマネージメント能力に舌を巻いた。


金だけじゃない。飴と鞭を使い分け、きっちり型に嵌めていくのが実に巧い。人たらしにおいては自信のあったカッちゃんだったが、人を動かすということは奥が深い。ヨシエがカーネギーやドラッガーを愛読していることの凄さなど、高校一年生にはわかるはずもなかった。


ジュンペイはハマちゃんという格好の聞き役を得て嬉しいようだ。勉強していたのか疑いたくなるような仲良しぶりだが、そのお陰でハマちゃんがドラマーとして加入することになったのだから、勉強など二の次だった。


エツコには話していないが、ジュンペイの成績アップにはカラクリがあった。確かにジュンペイの成績アップには目を見張るものがあったが、それだけでは県内有数進学校の特進コースに編入できるわけがない。カッちゃんはヨシエと共謀し、学年テストの抜け道を悪用した。学年テストだけは、編入に関係するため、入学試験と同様、テスト結果を非公開としている。問題用紙すら持ち帰ることができない。要するに、編入を買収することが可能だったのだ。証拠は一切残らない。


エツコやジュンペイに話すことはできない。もちろんハマちゃんもその中に入っている。こうまでしないとカッちゃんの考える理想のバンドが出来ないとヨシエに伝えると、ヨシエは快諾した。買収や家庭教師などにかかる工作費用がどれだけかかったのか、カッちゃんは知らない。知れば頼めないだろうことを二人とも理解していたのだ。


ただ分からないのは、ヨシエがなぜそこまでカッちゃんに執着するのかということだった。確かに自分はもてる。音楽の才能もあるかもしれないが、ヨシエは買いかぶっているような気がしてならなかった。











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