重いドアを開けてからというものの、それらのキーワードについてずっと考えている。
常に空っぽを自認している僕の脳みそではとても思いつきそうもない。名探偵じゃないんだから、と呟いた瞬間、ダレルホールの[プライベート・アイズ]を口ずさんでいた。
そうか。概念そのものではなく、曲名にキーワードを引っ掛ければ良いのだと思い立った。だが[プライベート アイズ]はどう訳してもただの[探偵]にしかならない。それに、翻訳行為はキーワード使用とは認められないだろう。薬師丸ひろ子が歌ったのは[探偵物語]、こちらも難しい。
[アリバイ]はどうだろうか。これはすんなり思いついた。[シンリジィ]の[ウェイティング フォー ザ アリバイ]だ。僕は幅広く洋楽になじんでいたこととフィル・ライノットの神がかったコンポーザとしての能力に感謝した。
ふと時計をみやると、朝が近いことを知らせていた。どうやら夜通し、キーワードについて考えていたことになる。僕は思わず苦笑した。
朝日が昇る前に、還らなければならない。しぶしぶ僕は、棺のドアを開けて、再び密室に入ることにした。太陽の光が漏れないことを確認すると、僕は左右の手を胸の前で組み合わせ、目を閉じた。
夜は短いが、僕の死は永い。残ったキーワードについては、眠りながらゆっくり考えることにしよう。
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