ちりん。
ちりん。
まただ。いい加減にしてほしい。暴風雨のなかの風流なんていらない。
私の堪忍袋は、もはや限界にきていた。
頭痛が止まらない。
夜中の暑さが私の神経を逆撫でし、窓に映った私のショートヘアーは怒髪のごとく散りながら真紅に染まっているようにみえた。
隣の部屋から間断なく鳴り響くかん高い音は、私の頭で不協和音を起こして、普段私の部屋からもギターの音が鳴り響いている事実をかき消していた。
私はのっそりとベッドから起き、隣で静かにしている彼氏をそっとまたぐと、寝間着のまま部屋を出た。
隣の部屋の扉は、あっさりと開いた。奥へと進む。実に苦しそうな表情を浮かべ横たわっている女が寝息をたてていた。
私と同い年ほどだろうか、まだ幼い子供と夫らしき男と川の字になっているのをみて、歯ぎしりした。
そんなに苦しいのなら、壊してあげる。
玄関で見つけたお誂え向きの木製バットを握りしめると、川の字に向かって振り下ろした。
荒い息遣いが聞こえ驚いたが、自分の発した息だとわかるまでに時間がかかった。気がつくと、自分の左手が激しく痛みを訴えている。何十にも及ぶ殴打で骨折したのかもしれなかったが、気分は高揚したままだった。
ベランダをあけ、バットで風鈴を叩き割った瞬間、頭痛がぴたりと収まった。不思議な安堵感に包まれた一方で、私はなぜここにいるのか分からないまましばし佇んでいた。
ふと、風鈴になびいていた短冊をみた刹那、私は背筋が凍った。
短冊に書かれていた文字は、「私たちを殺してください」
私は、風鈴に呼ばれていたのか――。