【記憶喪失】 | 相武万太郎オフィシャルブログ「六転び七転び八転びROCK。」(音楽、小説、酒)

相武万太郎オフィシャルブログ「六転び七転び八転びROCK。」(音楽、小説、酒)

ベッキーがテレビに出てるとチャンネルを変えてしまう男が、好きな音楽や小説を語ったり書いたりらじばんだりしています。音楽は洋楽ロックメインだったが最近はハロプロ大好きです。特にANGERME。

あれ?私なにしてたんだろ。


気がついたときにいた場所は浅草寺の雷門前。これまでに一度も訪れた記憶がない場所だ。


それにしても、と考えてみる。観光客が群がっている群集のかたすみに、私はなぜいるのか?それまではどこにいたのか?


まったく思い出せない。考えても真っさらな空白のみが私を支配する。


しかも夏らしい灼熱が容赦なく照らしているのに、私の服装といえば春らしい七分袖のシャツにマーメイドのスカート。周りから完全に浮いている。


じっとりと浮き上がってくる全身の汗は、皆目見当つかないことの恐怖からだった。


焦ってあたりを見渡すと、視界の端に見覚えのある顔が目についた。私の友人Sだ。思わず声をあげた。


Sは不思議そうな顔つきだったがすぐに破顔した。「なーにやってるの?Mちゃん。ていうか久しぶりだね~」


「え?うん」ひとまず話を合わせる。


「ていうか、偶然!旅行中にこんな大都会でばったりなんて
「そういえば…前の旅行中、Mちゃんいなくなったよね、どうしたの?」


…何かパズルの断片らしきものが脳裏に引っかかった気がする。


「まっいいか。てか暑くないの?」


暑いどころか寒気が止まらない。理由なき記憶喪失の手がかりが、手に届きそうで届かないもどかしさに私は発狂寸前だった。


「とりあえず、せっかくの再会、記念撮影といきましょうよ!はい、チーズ――」


その瞬間思い出した。Sちゃんにシャッターを押された瞬間、私はカメラに魂を抜かれたのだ…


Sちゃんはそうともしらず、ゴールデンウイーク中の旅行以来ついさっきまで、シャッターを押さなかったに違いない。


浅草寺を映した瞬間、私は現実世界に無事戻れたはずなのに、たった今、再びカメラに吸い取られてしまった。


私はカメラの中で、春から念じていた想いに、ふたたびとらわれた。





早く、シャッターチャンスを。