田口が開いた大学ノートは、死亡した住人の日記であった。
ここにすべてを書き記すことはできないので、以下に一部抜粋する。
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◆3月4日、晴れ
心はどんより。愛しのA美を見かけなかったから。
◆3月5日、晴れ
嬉しい。A美の自宅!なぜ今まで行動しなかったのか後悔。明日から楽しみだ。
◆3月6日、曇り時々雨
A美が喜ぶ姿がみたい。花を贈ろうかな。
◆3月8日、雨
ゴミ袋にバラが捨てられている。僕の気持ちを理解してもらうため、情熱的になるしかない。
◆3月14日、曇り
まただ。A美の好きなサザン桑田から贈られたら、捨てないだろうか。
◆4月1日、雨
エイプリルフールなんて、信じない。
◆4月8日、雨
神も仏もいないなら、僕がなろうか。君に、薔薇を届ける方法をみつけたんだ。
◆5月15日
今日は絶食4日日目だ。もう糞尿は出ない。見ていろ、A美。
◆5月17日、
ペン持つのが難しいが最期までやりとげてやる。僕は神だ。彼女の心にバラを届けるには、あと少し。
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日記は、5月18日を最期に更新されていなかった。
田口は、ノートに書かれた住所を頼りに、A美と思われる人物に連絡をとったのだが、田口も含め、死亡してしまったのだった。
以来、禁忌となった事件のことを話した矢吹までも、突然死してしまった。
事件が風化しないのには、秘密があった。
(第4話につづく)