読み切り小説【岩倉四郎の憂鬱】 | 相武万太郎オフィシャルブログ「六転び七転び八転びROCK。」(音楽、小説、酒)

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ベッキーがテレビに出てるとチャンネルを変えてしまう男が、好きな音楽や小説を語ったり書いたりらじばんだりしています。音楽は洋楽ロックメインだったが最近はハロプロ大好きです。特にANGERME。

「はいカットぉ」



無事収録を終えた岩倉四郎が向かう場所は、
行き着けの飲み屋と相場が決まっている。



役者稼業も長くなり、ロケ地での馴染みもできているが、
なるべくなら東京に帰って妻の経営する居酒屋で飲みたいと思っている。



やはり母ちゃんの作る肴が一番だ。


こう思うが、岩倉は移動時間を短縮できる飛行機に決して乗らない。



岩倉の飛行機嫌いは有名で、
ロケ地も新幹線や車で行けるところしか行かない。



仕事の幅が自然と狭くなってしまうのは諦めていた。



いかついヤクザの配役が多いから、意外に思われるが、
岩倉はそれでいいと思っている。



その日も熱海でのロケ上がり、深川まで戻ろうと新幹線に乗った。



グリーン席に身を沈めると、
ハンチング帽を目深にかぶり仮眠をとっていた。



リラックスしているようでも周囲の確認は慎重に行っている。



漁師町で生まれ育った岩倉は、若い頃から気性が荒く、
芸能界でこれまで生き延びたのは腕っぷしの強さにも関係が深い。



酒絡みのトラブルは日常茶飯事で、
妻の店に行きたがるのは、安心だからでもある。



岩倉の体に見せられない傷痕が無数にあるのは、
酒のせいでもあるのだ。



岩倉が飛行機に乗らない理由は、
飛行機が怖いからではない。



体内に撃ち込まれた、22口径の弾が金属検査で見つかり、
騒ぎとなることを恐れているのだった。




酒は怖い。心の底から思いつつ、今夜もまた飲まれる岩倉であった。