小説【夢みるメタボリック】第3話 | 相武万太郎オフィシャルブログ「六転び七転び八転びROCK。」(音楽、小説、酒)

相武万太郎オフィシャルブログ「六転び七転び八転びROCK。」(音楽、小説、酒)

ベッキーがテレビに出てるとチャンネルを変えてしまう男が、好きな音楽や小説を語ったり書いたりらじばんだりしています。音楽は洋楽ロックメインだったが最近はハロプロ大好きです。特にANGERME。

女性は新倉瞳、と名乗った。


話し好きな性格なのか、石本に質問させる隙を与えなかった。



「私、どうしてもハイヒールが欲しかったんです。

彼が似合うって勧めてくれたのが、
これなんです」

瞳がつづける。
「うまくいかなかった恋なんです。

うまくいったら、買ってくれたかもしれないな…


そう思って、買えずにいたんです。

でも、彼を引きずっている原因になっている気がして」


瞳は靴売り場を先導していたが、
くるっと後ろ向きになって、三郎に向かった。


「今日、偶然立ち寄ったら、現品限りになってたんで、
買わなきゃ!って思っちゃって」


三郎は納得した。


しかし、さっきまで飛び込みしようと思っていた自分が、
若い美人の恋愛話を聞いているとは、
おかしな展開だと苦笑した。



瞳は目ざとく三郎を見咎めた。「あーっ、またなんか笑ってる」



三郎は慌てて弁解したが、それが彼女には面白かったらしく、
腹をかかえて笑っていた。



瞳はひとしきり笑った後、ふと真顔に戻って、三郎に謝った。
「ごめんなさい。少し安心したんです。


私、この話、誰にもしたことがないんですけど、
はじめてあった人に話しちゃったから、自分でもおかしくて」



三郎は悪い気はしなかったが、
初対面だからこそ話せることはあるし、
盛りを過ぎた中年男がたまたま出会っただけだと、
期待などは持たなかった。




小一時間ほど、新宿の百貨店巡りをした結果、
瞳は気に入った靴を見つけ出した。



「いいのかい?ハイヒールじゃなくて」

「背伸びは、もうやめました」


その言葉の意味は、
恋愛からとおく離れた三郎でも何となく理解できた。



しかし瞳が年上との恋愛をやめたといって、
三郎には語る資格もない。



知らず知らず瞳に興味を抱いている自分に少なからず驚いた。



我にかえって、もうひとつ気になっていることを聞いてみたところ、瞳はきっぱり答えた。


「石山さんのおかげで、
さっき自分で買ったハイヒールよりも気に入ったものを買えたんです。

だから、差額なんていらないです」



彼女の目からは本気で拒否している意志が感じられた。



次の瞬間、自分でも信じられない言葉を瞳にぶつけていた。


「じゃあ食事でお返しするよ」



瞳は目を丸くした。「石山さん、ナンパですか?」



(つづく)