今夜も、強くなる。
あの日以来、俺は、寝るたびに強くなってきている。
嘘ではない。
中学から続けていた陸上。
短距離選手としてはパッとしない成績だったんだ。
でも、この3日で100Mタイムを2秒以上縮めた。
誰もが驚く。
いい気分だ。
手足の筋肉が隆起し、関節がみし、みし、と軋む。
何気なく走っていたあの日のあの瞬間、
俺に巨大な光が向かってきたのだ。
避ける隙もなく俺は光に飲み込まれた。
激しい衝撃が俺を突き抜けた。
それ以来、俺の体は強靭に変化し続けている。
翌朝も、関節の悲鳴で目覚めた。
首も異様に柔らかくなり、あらぬ方角も見られる。
私は、神になったのか。
それ以外に考えられなかった。
脇腹をさすり、私は部屋を出た。
テーブルに置かれた朝食をむさぼった。
母親と妹が怯えた表情で私を見ていた。
私は、箸を使わず鮭と米を食べている自分の両手を
しばし眺めた。
美しい手だ。他の人間が畏怖するのも無理はない。
万能になった私には、もはや学ぶものなどなかったが、
人間どもに更なる進化を遂げた私の走りを見せてやるために、学校へ向かった。
腹が重い気がしたが、脚力はみなぎっている。
人間どもに、ナド、マケナイ。
放課後は私の天下ダッタ。
体は風を超エタ気ガシタ。
人間ドモノ、驚ク顔ガ、タマラナイ。
ハハハハハハハハハ。
走りナガラ笑ツテイタラ、腹が痛くなってきた…
わ、私は神、痛みなどない!
脇腹から黒羽が見えた気がした。
俺の体はどうなっているんだろ、そう考えた瞬間、
俺の腹が爆ぜた。
臍から、何千いや、
何万もの蜘蛛の子が飛び散っていくのが、遠くなる視界に見えた気がした。
僕の近くにいた仲間も、奇声をあげて逃げていく。
僕の口から漏れた
助けて、
という言葉を最期に聞いた。