健雄とは数年ぶりだった。
康雄は兄と鉢合わせしないよう帰省していたが、
実家の最寄り駅ホームで出くわした。
1時間に数本のローカル電車だから有り得ない話ではなかったが、
健雄の姿をみつけた瞬間、思わず舌打ちした。
健雄は肩で風をきりながら近づいてきた。
「まだ煙草吸ってんだな。俺は今日、スパッとやめたよ」
「1日くれぇで自慢すんな」
康雄は煙草をくゆらし、健雄の顔に吹きかけてみせた。
健雄は気にする様子もなく、ガムをかんでいる。
「くせぇ息を煙草でごまかしてるお前とは人間が違ぇんだ。禁煙なんて楽勝だよ」
健雄はつづける。「ま、お前が俺に勝てるワケねぇ。
これまでもそうだったし、これからもだ」
康雄は声が震えそうになるのを必死にこらえ、いった。
「やってやんよ。今度こそお前をぶちのめしてやる」
「高校すらまともに通えなかったお前が?
笑えるぜ。
はっ、少しの我慢もできず、ブチ切れてばかりだったお前は、
俺の残りカスなんだよ!
できるもんなら、やってみやがれ」
健雄の高笑いに、康雄は静かに言い返した。「後で、吠え面かくんじゃねぇぞ」
澄んだ青空に、
すいかけのマルボロが跳ねた。
数年ぶりに、
康雄と健雄の、闘いの火ぶたが落とされた瞬間だった。
第3話につづく