おりんと向き合った瞬間、
男はあまりの美しさにしばし口も聞けなかったと言われています。
沈黙に耐えられなくなった男は、
「わしの女になってほしい」
いきなり切り出してしまうほど動揺したそうです。
男は己の初(うぶ)さを恥じましたが、おりんは返事はおろか、一向にうつむいたまま。
男はより愛おしくなり、
こみ上げる独占欲は炎のごとく血をたぎらせ
身を震わせました。
白くすらりとした手を触れてみたい。
想いに任せ右手を取ろうとしたそのとき、おりんは上目使いでこう言いました。
「旦那様のような方が、私のような女をなんて。もったいのうございます」
「そんなことはないぞ。わしのほうこそ突然のこと、すまぬ。
しかし、わしはお前を一目惚れしてしまったのだ…」
「…私のこと、一生愛して下さいますか?」
ぞっとするほどの美しさと肌白さが男を射抜く。「こんな気持ちになるのは生まれて初めてなのじゃ。
わしを信じてほしい」
「嬉しい」
男は、おりんの純粋すぎる残酷さを知ることになるのは、
それから数ヶ月経ったある夜明け前だった。