今回は、私自身が4年前に出合って冬シーズン一番のお気に入り素材になった「ウーステッドフラノ」で作製した、スリーピース・スーツの紹介です。
梅雨真っ盛りの時期なのに東京は珍しく先週一週間はまったく雨が観測されず、なんだか雨の少なく感じる今年の梅雨もそろそろ終盤へと向かいつつ、7月に突入し関東以西は節電もスタートし昨日ぐらいからは本格的に蒸し暑さも増してきて店でも冷房を入れ始め、通勤時の装いを見ても上着を羽織っているか持っているかはチラホラ見かけつつ、ネクタイは私も含めまったく締めていない、という完全に“クールビズ”が定着しているようで、これから9月末までは気持ちは秋冬へと向かいつつも、装いは一番ダラシナイ季節へと突入です。
このスリーピース・スーツは、前回の「チョークストライプ」に続き私自身が今シーズンの1着として選んだもので、前回も書いているように、歳をとってきたせいかソフトな素材へと気持ちが傾き、今シーズンはこの「スーパー140‘s」のウーステッドと決めつつも現時点では無地しかないしと思いながら、シングルの「グレーフラノ」が無いことに気付き、わざとディテールに変化を付けて作製することにしました。
この素材は、2008年の冬に私自身がブレザー&スラックスを作って、毎シーズン着る度に惚れこむほどの着心地の良さと復元力の良さに感心させられている素材で、古くからの毛織物の産地として有名な尾張一宮の小さなメーカー「葛利毛織」社のオーナーの自信作、スーパー140‘sの独特の艶としっとりとした肌触りが特徴のウーステッドフラノで、手織りの風合いを保つ為に「ションヘル織機」(超低速織機)に拘り続けている「メイド イン ジャパン」ならではの貴重な存在の工場で織り上げた、不況が深刻化しているヨーロッパの工場では真似の出来ない超一流と言える素材ではないでしょうか。
冬シーズンになると、弊店「TENJINYAMA」ではまだ試されていない方を中心にしつこくおすすめしている素材の一つで、もう少し厚ければ今ではお目にかかれない30数年前のイタリア「CARLO BARBERA」社ならではの「ウーステッドフラノ」に匹敵するか上を行くかと思われる貴重な品質なので、今回の無地に加え「ストライプ」や「グレンチェック」など色柄を増やすように毎回要望は出しているのですが、なぜかコレクションが少なくなる一方で寂しい現実に直面しながら、今後も無くならないことを祈る限りです。
モデルは、弊社で一番スタンダードな「RESZ」(ローマンイングリッシュ)を使い、クラシック・スタイルを強調してシングルピークドラペルの3ツ釦段返り、「ハンドメイド仕様」ならではのバルカ(舟底の形)のスラントチェンジポケットを付けてサイドベンツにして、襟付きのウエストコートを加え、スラックスはサスペンダー釦付きの2プリーツにして、スラックスも含め「ハンドメイド仕様」ならではの総片返しハンドステッチを入れています。
今回のコーディネイトは、いつも使っているラウンドカラーのクレリックシャツに、私の好きな2色使いのレップタイを締めて、ペーズリーのポケットチーフをスクエアーに挿して、靴は「天神山オリジナル」で作成したスエードフルブローグでいかがですか。
3週連続で「2012年秋冬商品紹介」を掲載させていただいていますが、これから始まる盛夏に向けて、夏物を追加で作られる方や出来上がりをお待ちの方などまだまだ多い中で、新着の秋冬生地コレクションも少しずつ加わり、珍しい「ギャバジン」や「ホップサック」の生地を見ながら頭の中では出来上がりを描いてみたりしながら、暑さを忘れてやっぱり秋冬物は素材の種類が豊富で楽しいなと実感しているところです。