(『人間革命』第11巻より編集)
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〈大阪〉 25
次は、青年の質問だった。
「小西理事長や山本室長を、無実の罪に陥れた大村たちは除名処分になりましたが、私の気持ちとしては、それだけですませるわけにはいきません。
さらに厳しい処置、処分はないのでしょうか」
純粋そうな青年であった。
「そう言うが、除名処分以外に、何の権利がこちらにありますか。まさか、殴りにいこうというわけにもいかんだろう」
また、笑い声があがった。だが、戸田城聖の表情は厳しかった。
「学会から除名になるということは、これは本当に恐ろしいことなんです。世間一般の団体や会社をクビになるのとは、わけが違います。
会社なら別の仕事を探せばすむが、仏意仏勅の団体がどこにありますか。
日蓮大聖人の御精神の根本は、広宣流布です。その御精神を受け継ぎ、仰せのままに広宣流布してきた教団は、学会以外にありません。
その証拠には、誰が大難を受けましたか。戦時中のことを考えてみなさい。学会は大弾圧を受け、牧口先生は獄死されているではないか!
皆、口でうまいことを言う。また、立派そうなことも言う。しかし、不惜身命の精神で、妙法広布に殉じようとはしない。
難を受けなかったということは、本気になって広宣流布をしなかったからです。
いや、できなかったのだ」
凛とした声であった。戸田の気迫が場内を圧した。