(『人間革命』第10巻より編集)
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〈展望〉 17
また、このたびの選挙で、多くの違反者を出してしまったことに対して、戸田と伸一は、言語に絶する苦痛を感じていた。
そのほとんどが、戸別訪問容疑であった。
真剣のあまりとはいえ、選挙法に対する無知とはいえ、法律を犯すことは社会人として許されない。
本人はもとより、家族のことを考えるにつけ、二人の断腸の思いは続いた。
戸田は、まず人心の一新を考え、人材の思い切った登用を考えた。
七月十七日には、男子部幹部会が、・・・ 女子部幹部会。
そして、形式主義に堕して、硬直したきらいのある組織を、透徹した信心をもって、柔軟にして弾力のある、生気はつらつたる組織に蘇らせることが、決議された。
こうした一つ一つの布石にも、将来を展望しての、戸田の深い反省があったのである。
二十四日の七月度本部幹部会。
戸田城聖は、彼自身の心境を語って、全国の幹部をいたわりつつ、さまざまな世評に惑わされることのないように戒めた。
「今度の選挙は、勝ったようであり、負けたようでもあり、すこぶる混乱を呈しております。
世間では、学会から三人も参議院議員が出るなどということは、夢にも思っていないことでありましたから、こっちが三人落として残念がっているのに、向こうは三人当選してびっくりしている。
それで、御承知のように、新聞では、相当騒ぎたてた。
これからも、いろいろと悪くも言うでしょうし、よくも言うでしょうが、そんなことで、信心がぐらつくことのないように、真っすぐな信心に立ってもらいたいと思います。
何も、新聞で褒められたからといって、嬉しがることもなければ、悪口を言われて驚くこともない。
われわれの信心は、ただ一途の信仰でなければならないと思うのであります」