(『人間革命』第10巻より編集)
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〈険路〉 20
(つづき)
今、君は、その最中だ。将来は、誰が保証しなくとも、御本尊様が保証してくださっている。
頑張ろうじゃないか。今の戦いのすべてが、仏道修行なんです。
君、分かって見れば、人生は劇場の舞台みたいなものだ。みんな登場人物となって、一生懸命劇を演ずるしかない。人生は劇だからです。
君も、広宣流布の登場人物となったからには、努力を積んで名優になることだ。君は必ずなれる。私と一緒に戦おうじゃないか!」
「はい、ぜひ、お願いいたします」
青年は、”今、俺は劇を演じているのか”と、ふと思った。すると、些細なことを気にして、じたばたしていた自分の姿が、心に浮かんできた。
哀れな拙い俳優である。彼には、自分を笑ってながめる余裕が、忽然と生まれた。
”どうせ演じるなら、大胆に演じよう”と思った。
伸一は、青年を見ながら言った。
「今日は、君とゆっくり話ができてよかった。記念に一詩を贈ろう。受け取ってくれたまえ」
伸一は、便せんにさらさらと書き始めた。
世紀の丈夫たれ
東洋の健児たれ
世界の若人たれ
君よ
一生を劇の如く
この一詩は、青年の胸に、たちまち焼き付いた。彼に、悲哀と愚痴から決別する時が来た。
四月、五月の戦いの最先端に立って、彼は、勇敢な戦士であった。そして、遂に留置場にまで、”乗り込んで”しまったのである。