(『人間革命』第10巻より編集)
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〈跳躍〉 13
山本伸一は、御書を手にして、パラパラとめくった。
「御書に、はっきりとこうあります。『わざわいは口より出でて、身を破る。さいわいは心より出でて我をかざる』。
いい気になって、悪口の言い合いをやっていたら、身を破るばかりじゃない。何もかも、めちゃくちゃになってしまう。
せっかくここまで、みんなで努力してきて、危ないところだった。
団結が破れるのも、口から出るんです。味方のなかに起きる批判・中傷は、ことごとく魔の仕業です。
派遣幹部と地元の幹部とが、まず、団結しないことには、戦いに勝てるはずはない。『異体同心事』を、もう一度よく拝読しよう。
『異体同心なれば万事を成じ、同体異心なれば諸事叶うことなし。…百人、千人なれども一つ心なれば必ず事を成ず』
大聖人様は、戦いは異体同心であるかどうかに、決定的な勝敗の因があることを教えてくださっている。
いいですか、異体同心の百人は、同体異心の七十五万騎を向こうにして勝ったんです。ちょうど、今の大阪の戦いのようではないですか」
伸一は、なおも真剣な表情で、凛々しく指導を続けた。
「・・・。つまり、派遣幹部と地物幹部の間に、毛筋一本ほどの隙間があっても、団結は破れることを知らなくてはなりません。
勝つも負けるも、畢竟するところ、私たちの一念が、固い団結で結ばれているかどうかに、かかっている。重大なことです」
山本伸一の表情からは、怒りが消えていった。
富井が頭を下げた時、居並ぶ幹部の大半が、思わず同時に頭を下げた。
いつの間にか忍び寄った破和合僧の魔は、山本伸一に早くも見破られて、正体を暴かれ、瞬時に退散してしまった。
団結の力は大きい。関西の四月の折伏活動は、ますます勢いを増し、大いなる高まりをみせていったのである。