一家の安泰のみに心を奪われていた女性の前に、いつか尊い、救世の道が・・・ | くにゆきのブログ

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今、自分が感動したこと、また知っていただきたいことを、主に記していこうと思います。

     (『人間革命』第10巻より編集)

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        〈脈動〉 26

 

 青年の直感は鋭く、思いのほか、意思は固かった。

 

 母から独立した青年の、決然たる思考は、逆に母に影響を与えすにはおかない。彼女も入会に同意した

 

 大矢ひでは、活動を開始した。

 

 ところが、世情にうとかったひでは、思わぬ反撃に出合った。名士たちは、巷に流布していた創価学会の評判を、彼女よりも知っていた。それも悪罵である。

 

 「神さんも、仏さんも、焼くというやないか、あんた、ようそんな信心に入りはったな」

 

 彼女が、仏法について語って歩いても、一人の入会者もなかった。幸福への道に逆らう反対者の心情が、彼女には不可解であった。

 

 要するに彼らの反対は、わずかばかりの財産を頼んでの傲慢さによることが分かった。

 

 彼女は、現に苦しみ悩んでいる人たち、社会の底辺で、経済苦や病苦に沈んで生活にあえいでいる人たちに、焦点を変えた

 

 視点を変えると、近隣の人たちのなかにも、知人のなかにも、不運に虐げられている人は多かった。

 

 入会以来、数カ月が過ぎた時、彼女は、十一世帯の折伏をしていた。人びとの蘇生の実態を見るにつけ、彼女は、信心活動の歓喜を知った。

 

 歓喜は、一歯科医の平凡な妻に、世のため、人のために、尽くし得る生きがいを教えた。

 

 一家の安泰のみに心を奪われていた女性の前に、いつか尊い、唯一最高の救世の道が開かれたのである。

 

 一年たたぬ昭和二十九年四月、彼女は四十五世帯の班長となった。

 

 この年の五月十五日、戸田城聖は、山本伸一を伴って来阪していた。春木支部長の呼び出しで、ひでは良彦と共に、戸田が滞在している大阪・西成区の花園旅館を訪ね、初めて彼に面会した。