(『人間革命』第7巻より編集)
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〈原点〉 12
(つづき)
これを哲学的に言いましても、哲学というものは、時間、空間をもって論ずるのですが、無始無終にして無量無辺、つまり永遠にして無限の、
この大宇宙を貫く本源の法に、諸仏の智慧というものは通達している。
その透徹した智慧を甚深無量と言っているのです
その時間、空間において透徹した智慧とは何か。すなわち、文底から言うならば、南無妙法蓮華経という智慧である。
南無妙法蓮華経という智慧こそ、初めて甚深無量ということが言えるのです」
ここで戸田は、コップの水を飲み、悠然と一息入れながら、次の朗読を聴いていた。
「『其智慧門難解難入。・・・ 』ーその智慧の門は難解難入なり。一切の声聞、辟支仏(ひゃくしぶつ)の知ること能(あた)わざるところなり」
難解な仏教に、それまでつまずいていた人びとは、雲の晴れる思いがしたことであろう。
戸田の説明の巧みさが、そうしたのではない。彼の獄中で得た悟達から発する、生命の鮮明な輝きが、聴衆の胸の奥底まで照らしていたのである。
そして、聴衆の生命の内奥に眠っていた仏性、すなわち南無妙法蓮華経を、いつか呼び覚ましていた。
この厳粛な作業は、彼にして初めて可能なことであった。
しかも、彼は、それをやすやすと行うことができたのである。