(『人間革命』第2巻より編集)
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〈光と影〉 8 完
戸田城聖は、二月二日、夜の法華経講義の後、質問に答えて言った。
「要するに、医者で治るような病気は、医者で治せばいいのだ。しかし、医者で治らない病気、これが人生の難問です。
だが、いくら難問でも、これを解決できる法がある。
絶対に治すことができる、と言ったらどうだろう」
戸田の話は続いた。
「ところが、どうしても解決できない、重大問題がある。
そういう問題を人は諦めてしまう。
だが、よく考えてみると、人間の宿業をはじめとして、解決できない問題の方が、意外に多いものだ。
社会や、また大衆といっても、あるいは労使と分けても、所詮は一個の人間から始まって、その集団にすぎない。
ゆえに、この一個の人間の問題を根本的に解決し、さらに全体を解決できる法が大事になってくる。
それは、真実の大宗教による以外にないんです。
今回のゼネストのようなことも、どうやっても、こうやっても、だめだとわかった時、やっと、大聖人様の仏法のすごさというものが、しみじみと、わかってくるにちがいない。
深刻なる理解をしないでは、いられなくなる。
その時が、広宣流布です。
われわれの戦いは、今、こうしてコツコツやっているが、すごい時代が来るんだよ。ゼネストなんか、われわれの広布の戦いから見れば、小さな小さな戦いであったとわかる時が、きっと来る」
西神田の二階は、薄暗かった。厳冬の電力不足が原因である。
そのなかで、戸田城聖の声は、生き生きとしていた。
そこには、暗い必死の面影はなく、明るい希望の表情があった。
かくて、敗戦の暗影が、いまだ色濃い時代のなかで、一条の光明にも似た広宣流布への指標が、一つ一つ示されていった。
彼には、民族の柱としての不抜(ふばつ)な確信が、心中深く秘められていたのである。