漫画「おくることば」やや無理筋。 | 休日の雑記帳

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広告から興味を惹かれて最後まで読んでしまいました。面白かったけど、辻褄合わせにリアリティがなさすぎ。

 

☆あらすじ☆

 

幽霊が出ると噂の横断歩道で信号待ちをしていた高校生の佐原は、歩道の向こう側に立つ少女の亡霊に惹かれるように路上に飛び出し、トラックにひかれて死んでしまう。クラスメイトたちは事故を隣で目撃していた佐原の幼馴染、千秋に同情の声を寄せるが、佐原の魂は千秋へ問いかける。「なぜ俺を殺した?」

 

お勧め ★★★☆☆

 

意外性もあって面白い作品ではあるのですが、あまりにリアリティのないストーリー展開がちょっと残念でした。漫画にリアリティを求めないタイプの方にはお勧めです。

 

以下、ネタバレを含みます。

 

 

 

 

 

 

 

 

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初っ端から主人公が幼馴染に殺されるという衝撃的なストーリー。何を考えているかわからない千秋の不気味さと、次の犠牲者がでそうなハラハラ感、真相に迫ろうとする佐原と物言わぬ少女の霊を感知できる霊感女子高生の登場など、興味を惹かれる展開から目が離せなくなりますが、オチの強引さにはがっかりでした。

 

そもそも一番重要なストーリーの根幹となる「佐原と少女が千秋によって殺された」という設定そのものが嘘でした、というのは、無理筋越えて詐欺の範疇。

 

どこの世界に重症の子供を死んだことにしておく親がいますか。証人保護プログラムでも受けるか、愛されていない以外では考えられない設定です。佐原と一緒にいた少女の霊も、佐原が幼少期に一緒にいた女の子だったわけですが、佐原に「そこで待っていろ」と言われ、道路のど真ん中で言われた通りに待ち続け、車にひかれて意識不明だったとのこと。いや、いくら幼稚園児でも、道路は危ない、車に気を付けてくらいの教育は一番最初に受けていてわかるでしょうよ。佐原も道路のど真ん中に年下の子供を待たせないくらいの分別はあったでしょうに。それに横断歩道に立ってる子供を轢いていく車もどうなの。治安悪すぎ。

 

そんなわけで納得のいかない設定が次々と明かされていくわけですが、佐原の認知と人格の歪みについてはよく描写されていて、こういう人いるよね、こんな心理だったんだ、と思わせる点はうまかったと思います。

 

人気者で善良と思われていた佐原の、傲慢で身勝手な思い込み。それによって傷つけられてきた周囲の人たち。でもその悪意に、周囲も佐原自身もなかなか気づくことができず、佐原は自分を正当化し続け、周囲は佐原が正しいのだから問題は自分にあると勘違いし、偽りの人気者がのさばり、周囲の人々は消耗していく。程度の差はあれ、どこのグループにもこのような人物はいるのではないでしょうか。最近はフレネミーとか、マニピュレーターとかいろんな名称がつけられているようですが。

 

それでも根本的にはすべての登場人物が善良なので、みなこの事件を通じて学び、成長して大団円を迎えました。めでたし、なんでしょうけど、どうにも不完全燃焼感の残る作品でした。