映画「藁の楯」自分だったら・・・ | 休日の雑記帳

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鑑賞した映画や書籍の感想記録です。
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今日は何を見ようかな、と思った時の参考にしていただければ幸いです。



制作年:2013年
制作国:日本

リアリティがないものの、考えさせられる作品でした。誰も幸せにならないお話です。

☆あらすじ☆

猟奇殺人犯、清丸国秀を殺したら10億円を支払うという内容の新聞広告が掲載される。清丸に孫娘を殺害された大富豪、蜷川によって出されたものだった。仲間に殺されそうになった清丸は保護を求めて警察へ出頭するものの、10億円の懸賞首となってしまった彼に安全な場所はなかった。

お勧め ★★★☆☆

「クズの弾除けになる覚悟はあるか?」
日本中から忌み嫌われる殺人犯、清丸の警護を命じられた警視庁のSP、銘苅たちの、信念と正義の狭間で葛藤する姿を描いた作品です。10億円と引き換えに殺人犯になりたいヒトなんてまずいないと思うのですが・・・

以下、ネタバレを含みます。











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こんなふうにはならないよ、と、一歩引いてみていたのですが、蜷川の計画は徹底したものでした。清丸殺害にトライした者には、失敗しても1億円。こうなれば、石の一つでもぶつけてみようかと考えるヒトも出てくるでしょう。

ぶつける方は石1つのつもりでも、そう考えるヒトが100人、1000人あるいは10000人いたら、本当に殺してしまうかもしれないし、他の人間に当たってしまうかもしれない。清丸に同情の余地はないけれど、小さな悪意の集合体は清丸以外の人々にも大きな危害を加える、恐ろしい怪物に育ってしまいました。

かわいい孫娘を無残に奪われた蜷川の、絶対に清丸を許さないという信念。誰からも許されない清丸を命がけで護衛する任務を与えられたSPたちの、職務に対する信念。そして、どうしようもないほどのクズ、清丸にさえ、おぞましいながらも彼なりの信念があります。

清丸の信念には1ミリの価値も共感性もありませんが、蜷川と銘苅たちの信念は、相いれないものの、どちらも理解できるので、どの立場でどう考えればいいかわからなくなりました。

自分の身内が清丸に殺害されたとしたら、お金と権力があれば蜷川と同じかそれ以上のことを考えるかもしれないし、自分がSPで、職務に誇りを持っていれば、清丸の人間性は無視して職務を果たすべきと考えるでしょう。

でもその過程で仲間が死んでいき、買収されていき、被害者遺族が涙ながらに命を狙いに来る。そういう人たちを目の当たりにして、それでも清丸を守るべきと信じ続けられるか。自分だったらどうするか、疑問です。が、一番共感できたのは、白岩かと思います。

被害者遺族にわざと清丸を殺害させてあげようとした白岩。清丸殺害に、これほど相応しい人物はいないでしょう、という白岩を説得する銘苅。真に正しいのは銘苅と理解できても、心情的には被害者遺族に仇を取らせてあげたいと考えてしまいます。

正しい道は明らかだけど、その道を選択し続けられるか。信念を持って正しい選択をし続けた銘苅には小さな救いがありましたが、犠牲も多く、なんとも後味の悪い映画でした。