さいごの毛布 | チャウ子のそれでも本を読むのだ

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チャウ子のごった煮風500字読書日記
 地味に更新中f^_^

 

 

今回ご紹介するのは

「さいごの毛布」

近藤史恵著

角川文庫です★★★

 

 

人見知りで、何を考えているかわからないと言われる智美は

両親や妹たちとの関係がよくなく、一人暮らしをしていましたが、

なかなか転職先が決まりません。

そんな折、友人の紹介で「老犬ホーム」のブランケットに

住み込みで働くことに。

個性的なオーナーの藤本麻耶子と従業員の安原碧との

共同生活が始まります。

智美は特に犬好きでもありません。

前半は、このブランケットに勝手に犬を置いていく飼い主に

対して、憤りを感じる智美。

一方、勝手に犬を置き去りにするわけではないけど、

犬が年を取ったから、自分の都合が悪くなったからといって、

ブランケットに犬を預ける飼い主に対しても、

智美は割り切れない感情を抱きます。

このあたりは私自身も犬が好きで飼っていた経験があるので、

智美の割り切れない気持ちはよく理解できました。

後半は麻耶子や碧のそれぞれ背負っているものが、

段々と智美にもわかってきて、

智美もまた家族との関係を見つめ直すことになります。

ブランケットで働くことになった際、

智美は麻耶子に「この仕事は犬がすごく好きだときついから」

と言われます。

犬が死ぬからだと思っていた智美は、それは些細なことだ

と麻耶子に言われます。

犬も人間と同じ。

いろんな運命を辿って生きています。

でも、人間と違うのは、人間は運命を自分で切り開くことが

できるけど、犬は飼い主によって運命を左右されてしまう。

そして、なんの意思表示もできない。

それでも健気に生きる犬って‥。

近藤さんは上手い作家さんだと思うのですが、

今回も伏線を交えながら、とってもいい作品に仕上がっていると

思いました。

地味だけどステキなお話でした。