ジャケットを探して、天神をウロウロした。

自宅から天神に向かう間、自転車を漕いでいる時に、やっぱりカテリーナさんのことを考える瞬間が、何度かあった。


「図々しいくらいに、勇敢に」


手首をとって、引き寄せて口づけくらいできただろう。自分にそうする勇気さえあれば。


とか思う。イヤなのは、それが出来なかった自分は、


「優柔不断の、臆病者だ」


と自分で思ってしまうことだ。たぶんほんとうにそうなんだろうけど。


ああ、ダメなやつ。でも、そうなんだと思う。


「優柔不断で、臆病者」



なんだ俺は。でも、仕事はしっかりやろう。ジャケットも似合うのをジックリと探そう。今度、カテリーナさんに会えたら…うーん、どうなるのか今はわからない。


やっぱり優柔不断だ(笑)


ジャケットも今日は決められなかった。あさってまた行けばいいさ。
この頃は、だんだん気持ちが落ち着いてきた。

東京から帰ってきてすぐは、仕事中でもそのことに頭がむいて、身悶えするくらい、恥ずかしい気持ちや「あのときああすればよかった、こうすればよかった」と後悔がおそってきたけど、いまは、大丈夫。


でも、これだけは結論がでていない。



浦安の駅へ戻りながら、夜道をふたりきりで歩いていた時、想いを素直に伝えるべきだったのか。


「カテリーナさん、子どもは?」


「いないの。いたらこんな時間までで歩けないよ。でももう高校生くらいの子どもがいてもおかしくないもんね。同級生でもそうだし」


「そうだね」


「主人には申し訳ないなあ、と思ってる。あとつぎを産んであげられなくてね」


十五分くらい二人きりだった。東京に五日間いて、三度会ってこれが最終日。でもふたりきりで、ゆっくりとお互いのことを話せるチャンスはそれまでなくて、これっきりだった。


足のサイズが小さすぎてあう靴がなかなかなくて、とか言って笑いあってるところから、何とか話を一歩進めたかった。


約束だったから仕方なく会ってくれたんだろうか?


なんで俺の名前、呼んでくれんのやろう?


これ以上、近づいてこないで、っていうサイン?


でも俺のこと、嫌いじゃないとは思うけど、けど最初に抱いていた興味はなくなったんじゃないか?


店を出るときも、ご主人からメールが入ってきていたらしい。


「こんな時間まで、なにしてんだ、って」


でも・・



「私は夜は基本的に空いてるので、リカルドの都合に合わせられるから」


ってメールで言ってたよなあ。やっぱり、警戒してるんだな。ちょっと気を許しすぎたのかもって。



なんだかんだ考えているウチに駅に着いてしまったのだった。



「僕はカテリーナさんのことが好きです。僕のこと、どう思われますか」


って言えばよかったかな。


「なんで、そんなこと言うの?もう二度と会えなくなっちゃうよ」


これが怖かったんだ。


情けない。
家の前の路地を、ギコギコいいながら自転車が通りすぎます。

僕はアイスカフェオレを飲みながら、世界地図をひろげて次に行きたい国を思案中。

ヨーロッパ!!

ドイツからオーストリア、ハンガリー、チェコ、どんよりと低く垂れ込めた空、壮重な石造りの教会、信仰深い人たち、おいしいナマズにフォアグラ!美しき蒼きドナウを下る旅だ。

でも、独りじゃ冬は寒いだろうなあ。

やっぱりやめとくか。