『人狼白書』その3 | 平井部

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平井和正愛好部

神社仏閣巡りレポ
& ほめほめ雑記

ハルキ文庫版。

 

このまとめ方の方が、読みやすいかも知れませんね。

 

 

 

 

 

 

 

 

物語終盤のポイントは、内閣情報室室長の矢島の離反です。

 

一度はアニキを誅殺しようとさえした矢島氏ですが、時折見せる崇敬の念は本心のようで、その辺りは雛子さんが語る人物評からも、彼の複雑な心情がよくわかります。

 

またアニキの方も、「腐れ縁」とか言いながらも彼の寝返りはなにげにショックだったようで🤣、良くも悪くも(笑)二人の絆の深さ。

 

 

矢島氏本人の意向はさておき、メトセラ・プロジェクトを阻止しようとするアニキに対して、内情もしくはその上の組織がはっきり「NO」を突きつけたって感じでしょうか。

 

実質的に、日本政府は米国政府の下部機関なので、米国中枢のエリートの意志には絶対に逆らえない。

 

伊豆の“不死”研究施設において所長が仄かしたように、これからの敵は「事実上の地球の支配者グループ」になるのでしょう。どれだけ困難な敵ですか💦

 

 

 

そして現れる新たな美しき刺客、矢島絵理子

 

姿を隠す矢島に面会するべく、私宅を急襲したアニキを迎えたのが絵理子であり、父に対する怨念をこじらせてアニキを陥れようとする悪女っぷりとか、虎4とかムーンライトお時とかの怒れる女子の系譜に連なる気がして、すっごく魅力的なんですけどね。この怨念を抜けたら、天使側に来てくれる気がする。

 

催淫波動でアニキをがんじがらめにする、絵理子の裏に存在する大滝志乃。人格が混じり合ったようにアニキに呪詛を吐く様子はかなり不気味で。

 

はっきり覚醒している絵理子を遠隔思念で操るなんて、どれだけ強烈な妖力なんだってビビりますけれど、これは強力な魔的存在たちが志乃に闇の元気玉注いでたことが後で分かります。

 

 

父矢島を恨むあまり、父が唯一心を許していたアニキを恨み、罠に嵌めようとする、かなり倒錯した怨念の裡にある絵理子。

 

彼女に放つアニキの言葉は、厳しいけれどめちゃ暖ったけえ…。

 

ここでさらに反発するのは、言葉の真実が確かに胸に刺さったからであり、すぐには無理でも、絶対に裏切らない“黄金の心”の持ち主が存在して、心を開けば自分も助力してもらえるということを、気づいて欲しいなあ。

 

…ってまあ、美女に肩入れって言われたらそれまでなんですが。

 

 

🐺🐺🐺

 

 

矢島に連絡を取ることに成功したものの、待ち合わせ場所に現れたのはヒットマンであり😓、ここで頭部に損傷を負うことで、意識を喪失し、闘いの場は異次元空間、暗黒の意識界へと移されることとなる…。

 

 

ここはかなり複雑な構成になっていて、現実世界で(意識喪失のまま)ヒットマンを倒して、志乃の居た教団〈磁光会〉を突き止めて急襲するのと「同時進行」で、意識界での闘いが繰り広げられる。

 

そしてこれは天使的存在の「配慮」であって、物質界での闘いが劣勢であることから、意図的に意識界へと「場」を移されたと。

 

…ってことは、アニキが死なない程度に頭部に受けた銃創も「上の人の織り込み済み」ってことかな。

 

軽くひでえ🤣

 

 

 

移行した異次元世界で、アニキが最初に邂逅するのが、大天使アルカンフェルであり、このあたりは、アニキ自身に、そしておそらくわしら読者にも「準備が整った」から、正体を表されたってことなんでしょうね。

 

この邂逅がきっかけで、アニキは自分自身の使命を思い出すこととなる。

 

ちなみに、ここでアルカンフェルが伝えた

 

「神は光なり 神はわれとともにあり」

 

という護りの言霊、リアルでもかなり効果あります。ちょっとザワザワする時なんかに、光を想起しながらマントラのように繰り返し唱えると覿面です♪

 

 

 

異次元のどこかの階層に存在する壊滅した東京

そしてついに見出した、志乃の居場所であった〈磁光会〉という淫祀邪教。

 

瞋恚に燃える、志乃との最終決戦。

 

しかし、強大な妖力を持つ志乃ですら、その奥に棲まう魔的存在の走狗に過ぎなかった。

 

 

そして対峙する、大ボス級の魔物たち。

 

この時点で重要な「ネタバレ」があることが、この先の闘いの真相を紐解く鍵になる訳ですね。

 

貫禄十分の魔使が、取り引きの条件として「メトセラ・プロジェクトに関わらない」ことを挙げたことからも、いかにこれが魔界にとっても重要案件なのかが分かります。

 

 

「おれは自分が法の護持者であることを教えられた。法とはすなわち宇宙の大法則だ。おれの狼男の不死身性は、その使命遂行のために与えられたものだ。おれは傍観者ではありえなかったのだ! 真の不死身、すなわち魂の不死を象徴するもの、それが狼男の不死性だったのだ! ならば、おれは人々にその“法”を教えなければならん。おれはそのために狼人間という特殊な種族に生を受けたのだ!」

 

 

全く…不覚にも、アニキがこんなに熱のこもった言霊発してたこと、完璧に失念しておりました。

 

 

魂の不死を象徴するのが狼男の不死性!!

 

 

物質万能主義こそ、闇の帝王サタンが仕掛けたまやかしであり、輪廻転生を否定する事になる不死性の悪しき移転、メロセラ・プロジェクトこそ、魔的存在の最重要案件である。

 

そして犬神明は、天上界にとっても魔界にとっても、最重要存在であり、アニキの動向が、文字通り現実世界の趨勢に影響を与えてしまう。

 

 

魔使が語った「人類はいずれ絶滅する」という予言はちょっと気になるところです。

 

そして、かつてアニキの妻だったという魔女サイキは「雛子は六ヶ月で寿命が尽きる」と…。

 

 

🐺🐺🐺

 

 

『人狼白書』、久しぶりに読み返しましたけれど、かなり認識を改めました。

 

こんなに凄かったのかと…。

 

三次元要素と意識界的要素が複雑に絡み合って進行するのに、ちゃんと論理的に完璧に整合している。

 

情報量多くて、恥ずかしながら読み取れてない箇所も多かった。

 

犬神明の信念はそのまま平井和正の信念であり、きっと相当な情熱をもって、描かれたんだろうと思います。

 

 

この作品、初版が発刊されたのは昭和51年で、それは当初から誤解や反発も多かったろうし、特に唯物的な信念を持つ方は受け入れられない部分も多いだろうとは思いますが、正直どうでも良いというか😅、特に反論はないし説得しようとも思わないです。

 

 

平井和正、いつも早すぎるし凄すぎる

 

 

そして闘いの舞台はアメリカへ!

 

一つ謎のまま残されたのは、大滝志乃に「雷太は犬神が殺した」と嘘を吹き込み、操った存在のこと。

雛子さんと矢島絵理子の運命も気になる所です。

 

盛り上がってきました😁