2010.11.30。ゼップ大阪でのCoccoさんのライブの日。
1年に数日もないくらいの大切な日で、仕事も休みをとって、万全の体勢で挑もうと思っていたぼくでしたが、職場で体調不良の人が出てしまって、急遽昼過ぎまでヘルプで入ることに(^_^;;。なんやかんやで慌ただしかったですが、その分記憶に刻まれる一日になりました。
ゼップ大阪は今回初めて。不安ながらも、駅から繋がる若人の流れに付いて行ったら、無事到着でき(^_^)。
開場前に行われるグッズ販売の列はもうできていて、ぼくも最後尾に。寒空の下1時間近く並んで、ツアータオルとハート型のチャームのみゲット。Coccoライブの名物がちゃがちゃコーナーにも、すごい長い列ができて途切れることはなかったです。「大当たり!」はCoccoのサイン入りらしく(^_^)。
近くにあるWTC(ワールドトレードセンタービル)には来たことがあって、この辺り賑やかな印象があったんですが、よく考えたらあの時はGWで、今回すっごく閑散としてて寂しくって。空き地に草とか生えまくりで。営業してるのか分からないような商業施設で、冷たいコーヒーゼリー食べて時間つぶして……。寒い日はあくまで寒いわし(涙)。
ぼくは整理番号1200番台だったので、開場時間からさらに列に並んで待たされて、入場できたのは18:30くらいでした。でも、みなさん騒ぎもせずに大人しく整列して、日本人ってすごいなあ……とか思ってました(^_^)。1500人規模のライブハウスってすごいことになるんですね。
どきどきしながらライブホールに入り、無事まん中右あたりの位置をキープ。席ありで言うと10列目くらいですかね。初めて意識しましたが、コッキーのファンって8割方女性なんで、そんなに背が高くないぼくも観易かったです(^_^)。だからグッズは女子向けが多いんすね。
場内うっすらとスモーク。ステージに置かれたマイクに幻影を重ね、高まる期待感。
場内暗転。わき起こる歓声!
メンバーのシルエットが楽器を手にし、走り出る歌姫の影。
繊い右手を天頂に向けて突き上げ、魂魄を震わす「イーヤッ! ハイヤッ!」のかけ声。
“ニライカナイ”!!
イントロのギターリフにからまる、Coccoの声音。すごい……。びりびりきます。
まばゆい白光に浮かび上がる姫が纏うのは深紅のワンピース! “赤花”ですね。
音のうねりに乗るように、手を横に開いて身体を揺らすCocco。
こんなに間近で彼女のフルライブを観るのは初めてで、はっきり見て取れるその白い貌の美しさと迫力に、ただただ圧倒され。
沖縄県民の切実な願いが、現行政権によって踏みにじられた絶望を契機として産まれたこの曲は、“ジュゴンの見える丘”と同じく、幾瀬の思いが込められた祈念の歌です。願っても願っても叶わない希望。それでも決して、“赤花”は消えることはない。此方にも彼方にも、等しく恵みの雨は降り注ぎ。
息つく間もなく、最初期のナンバー“首。”へ。
「抱き寄せて 絡まって 引き裂いて 壊したい!」という衝動は、今も変わらずCoccoさんの裡にあるんでしょうね。吐き出したい塊が巨大すぎてもどかしい……みたいな左手の動きも。
次いで、“強く儚い者たち”。身を切る苦しみに耐えるような表情。
たっしんさんのギターソロ、美しかったです。
ここから“Light up”への流れは素晴らしく。人の想いの儚さが歌われた2曲。Coccoのヴォーカルの美しさがよく堪能できる曲でもあります。
次の“十三夜”は冒頭にかなり長いアレンジが加えてあって、伸びをした後に始まったCoccoの舞い。群青の光の中、深海の中を漂うように。
ありえない身体の屈伸に、ありえないバランスでの所作がもらたす非現実感が、バレエの儚い魅力だとするならば、まさにその「ありえないバランス」を体現しているのが、Coccoという人なのかも知れません。常人には窺い知ることのできない異次元の美しさ恐ろしさを、Coccoという触媒を通して目の当たりにしたような非現実感を、何度も感じました。
「lift me up...」のリフレインから繋がったのは、なんと“カウントダウン”!
彼女が全身から滲ませるのは、まさに人を殺しかねないほどの狂気でした。すごいです。エンディング、浮かび上がったスポットの中で、激しく息をつきながら崩れ落ちる様子を観た時は、震えるほどの恐怖を感じました。
切れそうに張りつめた緊張感……。
これはこのまま、MCなしに突っ走るのかなあ、と考えていたところ、ここで「こんばんはございます、こっこです」と(^_^)。
こっこ~というファンの声援に、「なんだおまえら、やんのか」とぼそっと。
それでもわき上がる声に、「たまには『しいの~』とかも言え!」って(笑)。
こっこ~きれ~衣装せくし~という声に、「もうマルから出てやる」と、スポットから出てしまうCoccoさんでした。
次の“4×4”は、『エメラルド』の中で最も好きな曲です。
ヴォーカル奇麗……。すごいスキ。
原曲は、Cocco本人のアコギに打ち込みだけのシンプルな構成ですが、静かにギターだけで始まって、次第に厚くなってくるこのバンドアレンジも、すごく良かったです。
ここから、“クロッカス” “のばら” “カラハーイ” “あたらしいうた” と、『エメラルド』より5曲続き。この辺りはうきうき編で、Coccoさんも楽しそうに唄ってらっしゃいました。
ここで確かMCで、大阪はいつも暖かく迎えてくれて、帰って来たーみたいに感じてるのに、昨夜泊ったホテルの設備がだめだめで……、でも今日はおまえら来てくれてよかったよ。
みたいな内容でした(^_^)。
次いで、なんと“焼け野が原”!! ええ~っ、これきますかっ?!
さらに“樹海の糸”。
今回は「60分スペシャルライブ」ということなので、過去曲はほとんど期待してなかったんですが、こんなにたくさん、しかも、新曲と織り交ざることで違った魅力が実感できるんですよね。
次の、“三村エレジー”。前衛的なアレンジがなかなか良いなあって思って聴いおりましたら、Coccoさんが「ちょっとまって」と演奏を止めて。何が悪かったのか、2回もやり直しが続き、かなり長い話し合いの間に、急遽ギターのたっしんさんにトークがふられて、あげくに「ぱっとしないトークはおわったか」って(^_^)。
ちょっと緊張ムードが漂ったものの、Coccoさん笑顔で良かったです。3度目に無事完奏。「歌を止めたのは初めて」ということで、すごい貴重な経験でしたです。
“Spring around” “Stardust”と続き、“眠れる森の王子さま~春・夏・秋・冬~” “蝶の舞う”の新旧ハードな2曲。
キーボートの堀江さんとごにょごにょ話してたかと思うと、その堀江さんにメンバー紹介がふられ、さらにベースのカーリージラフさんにふられ(^_^)。
ここで、この日誕生日のドラムの椎野さんにサプライズバースデーケーキがっ。メンバーで記念撮影して、「大阪だから安心してやりたい放題やってます」とCoccoさん。椎野さんだけでなく、会場のぼくら全員の誕生も祝ってくれたCoccoさんでした。
いよいよ、最後の3曲。
“遺書。”から、“絹ずれ~島言葉~”へ至り、ラストに“玻璃の花”へと。
え~~っ、ここで“遺書。”きますか……。
「Cocco史上最も死に近い歌」と自らいう“玻璃の花”に繋げるには、切なすぎる曲。
“絹ずれ”、美しい……。先日公開された「インスパイヤードムービーズ」の映像が思い出されます。穏やかな老夫婦の笑顔に、老いた掌のアップ。部屋で独り膝を抱えるCocco。
この曲が書かれた頃のCoccoさんって、誰が見ても背筋が寒くなるくらい明らかに、死の翳を漂わせていましたからね。凛と背筋を伸ばし、2時間以上の激しいライブを疾走する目の前の彼女が、奇跡みたいに想えます。
“玻璃の花”。タイトル通りの、ふと触れれば崩れ落ちてしまう、極薄のガラスでできた花のような、どうようもなく心を惹かれる儚い美しさを持つ曲。
バンドアレンジも素晴らしいです! 頭上を覆う星雲の帯みたいな壮大なきらめき感。ザンサイアンツアーのエンディング、“焼け野が原”~“Happy ending”~“藍に深し”、きらきらツアーのエンディング、“ジュゴンの見える丘”~“チョッチョイ子守唄”~“強く儚い者たち”~“Never ending journey”、の流れも素晴らしかったですけれど、今回はよりすごいです。
炸裂する白光。その中心から伸びやかに歌声は広がり。
ステージに突っ伏して、深く一礼するCocco。
さっと立ち上がった彼女は、満面の笑み!!
バンドメンバーとともに何度も何度も観客におじぎをするCocco。とびあがるようにして、喜びを表出し、ステージの左右を行き来して手を降って。その笑顔は、最高に美しくって、でもそれは、胸に突き刺さるような美しさでした。
生きて、Coccoさん!!
生きてくれてるだけで良いから。
ステージ上手、ぼくの正面に来て、手を降ってくれた彼女の瞳を忘れません
終幕してしばらく、アンコールを求める拍手は鳴り止みませんでした。Coccoさんのライブにはアンコールはないのは分かっているのに。「終了」のアナウンスが5回ほども流れてからやっと、みなさん諦めて手を叩くのを止めました。
最高のステージをありがとう!!
彼女の歌が、想いが、正当に評価される世の中でありますように。
※一度アップしたものに誤記がありましたので、加筆訂正して再アップしております。