春の熊野詣で 3 | 平井部

平井部

平井和正愛好部

神社仏閣巡りレポ
& ほめほめ雑記

 もっとも楽しみにしていたこの旅最大のイベントが見事に頓挫し、面白いくらいに意気消沈してしまうわらし(^_^)。

 あ~あ、どうせオレなんかいっつもこんなもんやねん……。何やっても裏目裏目。こんな感じでなんにもええことないまま、独り寂しく死んでゆくんやわ……。いっそこのまま補陀洛渡海してみようかしらん……

 なんて、思考のネガティブモードは笑ってしまうくらい加速(^_^;;。
 全身にブルー感の縦スジを漂わせつつ、堂内で土産物を眺めるも、ぜんぜん気が乗りません。これから三十三札所を回るにあたって、御朱印帳をゲットして、仏のサインことお寺の御朱印を集めようと思っていたんですが、もうそんなんええわと。つーか寺巡りさえもやめてまおうと。

 いやいや、待ちぃや、よしかず。確かに御本尊にはお逢いできなかったけれど、お前立ちさん(秘仏の前にいらして、お参りした者を迎えて下さる仏さま)はあそこにちゃんと居てくれてはりますやん。寂しさを悔やむより、こんな素敵な風景の中であの方にお逢いできたことをまず喜んだら?

 まあ、それもそかな。

 ちょっとだけ気を取り直して、再び如意輪観音さまに向き合ってみるわらし。
 う~ん、やっぱりお綺麗かも。とっても小さい方なんですが、上方にちょんと腰掛けられたそのお姿には、すごい存在感があります。女優の沢尻エリカ サマを想わせる、ちょっとつんとした面持ち。ご下命して頂いたら、なんでも喜んで聞いてしまうそうなくらいの貫禄……。けだる気にポーズをつけている、六本の御腕がお美しい。

http://www2.ocn.ne.jp/~sanzan/NTTcontents/seigan/takara/index.htm#takara2

 そしてそのすぐ前には、裸形上人と思しき僧侶の像が鎮座されています。彼に意識を向け一目観た途端、僕はこう叫んでいました。

「ジョ、ジョージっ!!」

 ……って、書きたいところなんですが、正直申しまして、ホームページで先に裸形上人の像は観てしまっておりましたし、この時も像が小さいのと離れているのとで、お顔をしっかり判別する事はできませんでした(^_^)。

 でもほんまにこの裸形上人像、わらしの心の恋人……でなくって師匠、元ビートルズのジョージ・ハリスンに、すご~い似てらっしゃるんですよ! きりっとくっきりした眉に、ほくそ笑むようなニヒルな口元に、セクシーな痩身に。それはもうそっくりそのままジョージであり、ビートルズフィギュアの中にこの像入れてもまったく違和感なしと想われるくらいに。

http://www2.ocn.ne.jp/~sanzan/NTTcontents/seigan/takara/index.htm#takara8

 一部では有名ですが、このジョージさんがインドに傾倒し、インド音楽やら瞑想やらをビートルズのメンバーに広めていったんです。インドにジョージに裸形上人……これはきましたね。さらなるインドムーブメントの予感。

 せやんな、そういえば今回は、あんたに逢う為に此処まで来たんやったわ、ジョージ(すっかりジョージ呼ばわり)。逢えてよかったよ、ジョージ。

 なんて考えていたちょうどその時、
「あちらは裸形上人ですけれども、いつもはあそこにはいらっしゃらないんですよ」
 という話し声が背後で……。

「え? ほんまですか? いつもは観れないんですかっ?」
 と、思わず振り返って訪ねてしまうわらし。
 声の主は、ガイド役をされている尼僧さんでした。剃髪がよく似合ってらっしゃる、笑顔の素敵なとっても綺麗な方です。
「そうですよ。いつもは隠されていて、決して観ることはできないんです。今日は法要が行われたので、特別にあちらに出てらっしゃいますけれど、これも御縁ですねえ~。幸せだと思わないと」

 後半は、初めから案内してらっしゃる方に向けてのお言葉でしたが、なんだかすごく胸に染みてしまいました。
 尼僧さんにお礼を述べて、再び裸形上人像に向き合います。
 そうですか、いつもは観られへんねんね……

 その時、きました、なんだかぶわって泣きそうになる感じ(^_^)。神社仏閣を詣でた際、なんだかすっごい優しい波動に包まれるのを感じる時があるんです。彼に会えた嬉しさと、迎えてもらっている様な感じと、ジョージ・ハリスンが亡くなった哀しさとか、いろいろな感じが胸の中に次々湧いてきて。小さい人ですが確かにこの裸形上人のソウル、こちらのソウルに伝わってきました。心に流れるのはジョージの名曲“My Sweet Lord”です。
 ありがとう、ジョージ(すっかりジョージ呼ばわり)。また来るからね!
 笑顔で挨拶して、本堂を後にしました。

 御朱印帳は勿論ゲットです(^_^)。本堂前の小屋で土産物を売ってらっしゃるおばさんがとても面白い方で、市原悦子みたいな声で「ようこそお参り~。こちらは三十三札所の一番目。四国四十八ケ所よりも歴史が古いんですよ~」みたいに、ガイド役も勤めてらっしゃるんです。
 お話をうかがって、普通の御朱印帳ではなく、三十三ケ所集め専用の納経帳をゲットいたしました。自分の葬式の時に顔に掛けておけば良い……という説明の時に思わず笑ってしまって、ちょっとむっとさせてしまったりして(^_^;;。

 後で調べてみましたら、こちら青岸渡寺の御本尊さま、3メーターもあるすごい巨きな方らしいですね。初めにクライマックスな対面をしてしまうより、むしろ今回はお逢いできなかった方が良かったのかも。

 いつかまたきっと、お参りさせていただこう。
 見晴らし台から、紅い三重の塔の後ろに那智の滝が望める、有名なまんま絵ハガキな絶景を眺めながら、僕は心に誓っておりました。

ときめき見仏記