春の熊野詣で 2 | 平井部

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神社仏閣巡りレポ
& ほめほめ雑記


 新宮の市街に入り、国道42号を右折して勝浦方面へ。この辺りから空は曇ってまいりましたが、想定内なので残念な感じはせず、むしろ春の雨に濡れながら聖地にお参りできる事をとても楽しみにしておりました。山間では満開だった桜も、新宮市内ではほぼ葉桜。道路脇の樹々の黄緑が鮮やかで、すっかり新緑の季節の風情でした。

 標識に従って那智方面へ右折。目指すお山まであと数キロですが、まずはお山の玄関口にあります補陀洛山寺にお参り。こちらは、南海の彼方に存在するという浄土への憧れを現わすお寺さんです。「補陀洛渡海」といって、遥か浄土を目指して、小さな舟で海に旅立った僧侶が沢山いらしたということです。

ときめき見仏記


 お寺というよりは公園のような雰囲気の小さな古刹です。すぐ横の神社にお参りしてから、本堂へ。こちらの御本尊 千手観音さまは秘仏で、閉じられた厨子の前にお写真のみ飾られていました。どこかインドとかアフリカとかを想わせる、異国風の顔立ちが愛らしい仏像さんです。このお方にもいつかお逢いしたいですね。

 さあ、那智です!
 逸る心を抑えて、あえて土産物屋とかに寄って自分をじらしつつ(^_^;;。
 つづれ折りの山道を進み進み、見えました、右手に那智の大瀑布! いよいよ那智の御神域です。心わくわく。

 滝を過ぎてすぐの所にある、予約してある民宿に車を停めさせてもらって、身支度を整えて御参拝へ。到着したのがほぼ正午ちょうど。車で約6時間半、200キロちょっとの行程でした。

 茶店の並ぶ通路を進むと程なく、遥か頭上のお宮へと続く石段の登り口が現れます。那智黒石で作られた土産物を眺めつつ、ゆっくり登坂。以前来た時には、いやらし系の飴なんかが売っていて、彼女いない暦30数年の同僚のいとう君に買って帰ろうと思っていたんですが、今回ほとんどなくなってしまっていて、少し残念でした。

ときめき見仏記


 石段を登り切ったところで、神社とお寺とそれぞれにお参りする道が分かれます。僕はまず神社にお参り。紅い鳥居を潜って、手水を使って、またちょっと石段を登って(^_^)、いよいよ到着、熊野那智大社!
 お参りしたり、見晴らし場から眼下の風景を眺めたりするものの、心はすでに見仏モードであり(^_^)。境内にある大きな楠さんがとても愛らしくって、境内の雰囲気をやわらかくしているんですけれど、彼にそっと触れて御挨拶してから、すぐ隣の敷地にあります那智山 青岸渡寺に移動です。


ときめき見仏記


 すぐ隣なのに、境界の門を潜るとまったく雰囲気が異なるのが面白いです(^_^)。京都奈良の大寺院を見慣れた眼には、むしろこぢんまりとした印象があるんですけれども、お山そのものが信仰の対象になっている神域のお寺ですからね。なんて言うんでしょうか、エネルギーのツボといいますか、こちらで祈念することで世界に繋がるといいますか、そういう“広がり”を感じます。

 屋外の土産物を少し眺めてから、木製の階段を登って本堂内部へ。うう、このえも言われぬ抹香臭さ……。ずきずききますね。
 う~ん、来てますねえ雰囲気感……。さすが第一番札所。あまり正面を見ないように(^_^;;一礼してから、まず左隅の仏像たちを観賞。をを、エンノこと役の小角がいる! しかし、今一つネームバリューに欠けるのか、皆さんほぼ例外なく素通りで、御本尊だけ拝んで素で出て行かれます。「オレは観ちゃうよエンノ。しっかり拝んじゃうよ。だって好きなんだもんね」と、ひとりいとうせいこうを演じながら、小角像に見入ります。

 間近で観るエンノ像、正直あんまりイケてないです……。なんでこんな風に剽げた顔に作るんでしょうねえ。眉はハの字で、妙にリアルな感じで口を開けて歯まで彫ってあるので、その面差しはすっかり柳沢慎吾さん……。余談になりますが、かの美輪明宏さんが護摩焚き中に感得された小角は、甲冑を着たとんでもない美青年で、ぼくのように平井和正の小説によって役の小角を知ったブラザー達のイメージに、正にぴったりだったようですね。そのイメージのままの美仏を創って、吉野のどこかのお堂で拝めるようにする……。まずは美仏でレディースのハートを捉える作戦で。「エンノ像をもっとメジャーに」というのも、見仏界が取り組むべき重要なテーマの一つでしょうね。

 さらに堂内で販売している土産物を眺めて、自らをじらすだけじらした後、正面を向いて憧れの如意輪観音さまに対面です!
 内陣(天界)と現界の区切り柵の向こう、銅色に輝く壮麗な装飾が天井から吊るされており、その奧に、小さな如意輪観音さまがゆったり腰掛けて、僕達を見下ろしてらっしゃいます。

 あれ? でもこのお方、確かテレビとかで拝見したことあるなあ……。
 不安に思って、係の女性に問い合わせてみると……

「あれはお前立ち様です。御本尊の御開帳は、法要が行われる10時から30分だけなんです」

 ……とのこと。

 ぇ? ええ~っ?! せっかく休みを合わせて、遥々やって来ましたのにっ(涙)!