1.はじめてのパチンコ編(3)
覚えたてのパチンコが楽しくて仕方がなかった。
バイト勤務を終え、交代のパートのおばちゃんに「これから勝負してくるんや」と言い放ってパチンコホールに行くのが日課になった。
投機的なギャンブルに挑む俺って、ハッキリ言って滅茶苦茶格好良いなと思っていた。
勝ち負けは別として。
勝敗結果はよく覚えていない。が、大当り確率の存在さえ知らなかったのだから
勝ったり負けたり負けたり負けたりで、大ダメージを受けない程度に結局負けていたのだろう。
そんなある日、新台入替という行事に遭遇する。
友人と向かったホールは駅前から遠く離れた10号線沿いのホールだった。
新台は記憶が確かならばパールセブンのような見た目のセブン機。
友人と並んで打ち始め、図柄がテンパイした時にそれは聞こえた。
リーチ!
「おわ!!この台、リーチっちしゃべりよんぞ!!!」
衝撃だった。パチンコ台から女性の声が聞こえてきたのだ。
現代の方々にとっては意味が分からないかもしれないが、
それまでリーチすらなかったパチンコに音声まで搭載された事に初めて遭遇したら皆同じだと思う。
はじめての出来事にテンションが上がる。
が、所持金は下がって負けて帰った。たぶん。
はじめてパチンコを覚えた別府での記憶はこれくらしかない。
後は早朝開店前に駐車場で銀玉を拾ってまわるおばあちゃんらが現れ、
生きていくっていうのは大変なんやなと適当に感じたくらい。
それから私は上京することになる。
高校卒業して、進学するには金がなく、ひとまず住処を確保しつつ仕事をするには別府で仕事が探せなかったのだ。
友人に見送られ、別府駅を発った。
ありがとう。さようなら。
もう戻ることのない、思い出が詰まった幻の大地・・・