ゴト(不正)事件簿 前編 | ライターじゃない、アイドルだ

ゴト(不正)事件簿 前編

今から10年ほど前の話。

ゴトの主流はパチンコ機の裏ロムセットだった。




― 某日とあるホールにて ―

昼時を過ぎた午後。

ホールの客付きは約3割。

空いているので、騒々しさはなく、

時がゆっくりと流れていた。


ホールを巡回しているのは、

ぼく、Aさん、それと新人のBだ。

事件は唐突にやってきた。

「お客様が携帯無くしたというので探しに入るね」

インカム(無線機)から、

Aさんの業務連絡が聞こえてきた。

「了解です」

めずらしいトラブルだなと思いながら、ぼくは返事をする。


すると、

今度は新人のBくんの業務連絡が来た。

「玉貸機から玉が出ないというのでトラブル入りますー」

「了解」

これでホール巡回は自分だけになったなと思いながら、

インカムで答えた。


常にホール巡回は誰かがいないとマズい。

大当りしたお客さんが

ドル箱がないと困ってしまう。


しかし、悪いことは重なる。

不安気にパチンコ島を巡回するぼくに、

ある年配客が声をかけてきた。

「これ、どこに打てばいいの?」

まず聞くことのない質問に、

ぼくは驚いた。

どこにでもあるセブン機なのに、

やり方が分らないとは。

初心者には丁寧に教えて上げなければいけない。

ぼくは理解しやすいように、言葉を選んで説明をした。

自分が思う以上に、まとまった説明ができたので

これで大丈夫だろうという自信があった。

けれど、説明を静かに聞いていた年配客は

困った顔をして答えた。

「あー、もう一度説明してくれる?」


今の丁寧すぎる説明で理解できなかったのか。

おかしい。

いや、理解しようとしていない……?


AさんとBは時間が掛かりそうなトラブルに入っていて、

ぼくはこの不思議な状況に遭遇している。

その時、

ぼくの体に悪寒が走った。

・・・ヤバイ。何かヤバイ!!



【続く】




じらしてすいません゙;(;゚;ω;゚; )